1999年6月号掲載
明日を支配するもの 21世紀のマネジメント革命
Original Title :MANAGEMENT CHALLENGES FOR THE 21ST CENTURY
著者紹介
概要
「21世紀のマネジメント革命」が副題。「これから起こる変化は、19世紀半ばの第2次産業革命や、大恐慌や、第2次大戦後の構造変化よりも急激である」という著者が、21世紀のマネジメントを見通す。破局的な少子化等、今後の経営で前提とすべき変化を挙げ、具体的になすべきことを提示。これからは労働者が自らをマネジメントする必要があると説く。
要約
経営戦略の前提が変わる
21世紀という「急激な変化と不確実性の時代」にあって、企業が自らの経営戦略の前提とすべきものは何か。それは、次の5つである。
①先進国における少子化
最も重要な21世紀の現実は、破局的ともいうべき少子化の進行だ。すでに欧州と日本では、出生率が人口を維持できないところまで下がった。
ここで重要なのは、人口の総数よりも年齢構造である。15歳未満人口はごくわずかとなり、60歳以上人口が圧倒的に多くなる。
過去200年間、企業は人口が増加することを前提としてきた。だが今や、若年人口の減少を前提に、経営戦略を立てなければならなくなっている。
②支出配分の変化
人口構造の変化同様、支出配分の変化も重要だ。
企業は、売上の増減を気にする。だが、本当に重要なのは、顧客の全支出のうち、自社が提供するカテゴリーの製品やサービスに使ってもらっている割合についての数字である。
支出配分の変化は、経営戦略のための基本的な情報である。なぜならば、支出配分は一度落ち着くと、長い間そのまま続くからである。
20世紀における成長分野は、政府、医療、教育、余暇だった。だが、余暇はすでに成熟部門であって、衰退部門でさえあるかもしれない。先進国では、労働時間の減少は底をついたとみられる。
医療と教育の2つは、今後とも成長部門であり続ける。人口構造の変化のためである。だが、教育の分野では継続教育に重心が移るなど、部門内の様相は一変する。
③コーポレート・ガバナンスの変容
最近の50年間において、先進国では中流階級の出現と平均寿命の伸長が、年金基金と信託基金の発展をもたらした。その結果、今日ではそれらの機関が米国の全上場株式の40%以上、大企業の株式の60%を所有するに至っている。
企業は誰のために経営するのかというコーポレート・ガバナンスに関わる問題の背後にあるものが、この変化である。株主利益への急傾斜の背後にあるものも、この変化である。