1999年11月号掲載
ひとりのメールが職場を変える こころのマネジメント
著者紹介
概要
職場の空気に温かさが欠けている。一緒に仕事をしている仲間の心が離れ離れになっている…。こうした職場の問題を、週に一度のメッセージ交換によって解消する、「ウィークリー・メッセージ」という方法を紹介。自らの職場に導入し、9年にわたって実践してきた田坂広志氏が、この方法の効用を明らかにする。
要約
1つのメールで職場が変わる
メンバー全員が、つれづれなるままに思いを書き綴ったエッセイを毎週作成し、それを月曜日の朝、他のメンバーに電子メールに乗せて発信する。
それが、私の職場で長年続けている「ウィークリー・メッセージ」という習慣である。
例えば、メンバーのAさんは、先週末に家族で行ったドライブの楽しい思い出についてメッセージを送ってくる。いつもまじめなDさんは、最近の環境問題についての憂慮を切々と述べている。そして、多くのメンバーが業務を離れ、自由なテーマで語る中、Fさんは先週終了したプロジェクトについての反省点を真摯に述べている…。
このウィークリー・メッセージを実行するには、まず専用のメーリング・リストをつくる。そして毎週1回、そのリストを使ってメンバー全員がエッセイの交換を行う。ただ、それだけである。
ウィークリー・メッセージには、次のような3つのルールがある。
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- ①プライベートなことでも自由に書いてよい。
- ②他のメンバーに対する誹謗、中傷はしない。
- ③交換したメッセージを、決して職場以外の人に伝えない。
ウィークリー・メッセージは、実行するのは簡単だが、それが職場に与える影響は非常に大きい。
私の経験では、この習慣を持つだけで、職場の何かが徐々に、しかし確実に変わる。雰囲気、空気、そして文化とでも呼ぶべきものが自然に変わっていくのである。
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では、ウィークリー・メッセージは、組織をどのように変えるのか?
相互理解が深まる
職場において仕事を円滑に進めていくには、何よりも、メンバー同士が互いを深く理解し合わなければならない。そのため、多くの企業は、親睦会や社員旅行など様々な機会を設けて、メンバー同士の相互理解を深めようと努力してきた。
確かに、これらによってメンバー同士が「仲良くなる」ことはある。しかし、それは「理解し合う」ということとは少し違うのではないだろうか。