2001年11月号掲載

日本の「敵」

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著者紹介

概要

十年一日のごとく「改革」が論じられるも、前に進まない日本の政治。一方、日本人の間には「人に迷惑をかけなければ何をしてもいい」という履き違えた自由が蔓延し、若者のモラルの崩壊も見られる。日本は、こうした危機をどう克服していけばよいのか? 政治学者・中西輝政氏が、日本の「内なる敵」、戦後民主主義の弊害を論じつつ、日本再生への道を説く。

要約

「敵」から目をそらす日本

 常に「敵」という存在から目をそらし、曖昧にしてやり過ごす ―― 。こうした戦後日本の一貫した姿勢が、今日の「日本の危機」の根本原因だと言ってよい。

 冷戦体制崩壊後、確かに目に見える敵は少なくなった。ソ連を中心とした「東側」というわかりやすい敵の崩壊、グローバリゼーションの進展により、世界に敵はいなくなったかのように思える。

 だが、敵は存在する。その敵には、「エネミー」という敵もあれば、「ライバル」という敵もある。さらには「内なる敵」もいる。

 我々にとり今一番必要なのは、「日本にとっての敵」を明確にすることだ。脅威やリスクにも見て見ぬふりをし、あらゆる対立を回避する生き方、いつも「優しく」、ただ「仲良く」というのは、行きつくところ「滅びの哲学」に他ならない。

 例えば、阪神・淡路大震災から5周年目に当たる2000年1月17日、その日の新聞各紙の震災特集は被災者の「悲しみ」一色で貫かれていた。

 こうした視線も確かに大切である。しかし、この地震国では地震という「次なる敵」に備えることが最優先されるべきではないのか。マスコミは、今後の防災をどうするのかということをもっと強く訴えるべきではなかったか。「目前の敵」を語ろうとせず、目をそらす。このことがより多くの「犠牲者」を生むことにつながるのだ。

 敵を論じるということはまた、自分たちの拠って立つ基盤を明確にするということでもある。そして、自分自身を改めて明確に意識する、「精神の仕切り直し」の作業ともなる。

 こうして「日本の敵」について考えていくと、今、最も大きな「敵」と言えるのがバブル崩壊以降の日本経済の窮状だ。そして、その原因を突き詰めると、21世紀の日本にとって「戦後という自らの過去が一番の敵だ」という命題が浮上する。

 

「政治の弱さ」を克服せよ

 学歴社会、マイホーム主義、憲法9条に代表されるごまかしの“平和”主義、「優しさ」だけの福祉政策を求める生き方…。今、戦後型日本のあり方と日本人の生き方が大きく揺らいでいる。

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