2003年4月号掲載
パラダイムの魔力 成功を約束する創造的未来の発見法
Original Title :PARADIGMS
著者紹介
概要
未来を予測するのは難しい。なぜなら、我々は常識や目の前で起こっていることに囚われるあまり、「変化の兆し」を見逃してしまうからである。この、人間の思考を縛る足枷から逃れるにはどうすればよいのか? それには、「パラダイム」の原理を理解することである。パラダイムに基づいて社会やビジネスを見れば、変化を事前に予見したり、チャンスをものにできるようになる!
要約
パラダイムとは何か?
スイスは長年、世界の時計市場を支配してきた。1968年には、世界の腕時計市場のシェアの65%以上を握るなど、圧倒的に世界のリーダーだった。
ところが80年になると、市場シェアは10%以下にまで落ち込んだ。一体、何が起こったのか?
スイスが直面したのは、腕時計作りのルールが根本から変わる「パラダイム・シフト」だった。すなわち、機械時計の時代から電子時計の時代へ移行したのである。
スイスにとって残念なのは、同国の時計メーカーが「将来を見通す力」さえ持っていれば、この悲劇は避けられたことだ。
実は、スイスのある研究所が水晶(クオーツ)発振技術を腕時計に応用することに成功し、67年にこのアイデアを自国の時計メーカーに持ち込んでいた。だが時計メーカーは、ゼンマイのない時計など時計ではないと考え、相手にしなかった。
一方、日本の時計メーカーはこの技術に飛びついた。その結果、68年には1%未満だった世界市場での日本のシェアは、今や約33%となった。
スイスのような過ちを犯さないためには、将来を予見する能力を高める必要がある。そのためのカギとなるのが、「パラダイム」の概念だ。
パラダイムとは、「ルールと規範であり、①境界を明確にし、②成功するために、境界内でどう行動すればよいかを教えてくれるもの」である。
例えば、テニスはパラダイムだ。
テニスでは、ネットの向こうからボールが打ち込まれる。これをルールに従って解決しないといけない。従って、野球のバットで打ったりするのではなく、テニス・ラケットで対処しなければいけない。そして、球を打ち返し、相手のコートの境界内に落とせば、問題を解決したことになる。
つまり、今戦っているのは、どんなゲームなのか。そのゲームにどうすれば勝てるのか。それを教えてくれるのが、パラダイムだといえる。