2005年5月号掲載
小富豪のための上海〈人民元〉不思議旅行
著者紹介
概要
今、世界中の投資家が、高度成長を続ける中国に注目している。本書も中国への投資を勧めるものだが、単なる金儲けの勧めに非ず。人民元に投資し、為替自由化など今後中国で起こる“歴史的イベント”を楽しもうという、遊び心に満ちた書だ。著者が中国の銀行で体験したやりとりなどもリアルに描かれ、中国の金融事業がよくわかるとともに、読み物としても面白い。
要約
中国の銀行はこんなに面白い
中国では、外国人旅行者でも簡単に銀行口座を開ける。そこで著者は、上海の外資系銀行で日本から持ってきた100万円を人民元に両替して、3カ月定期預金にしてもらった。
現金を数え終わった窓口の女性に、外貨から元への両替はいくらまでできるのか聞くと、「1日5000米ドルまでよ」という答えが返ってきた。
100万円は、約1万米ドルに相当する。では、なぜ100万円を両替できたのか? その理由を問うと、彼女は悪びれもせず、「1日5000米ドルを超える場合は、税関の申告書がいる」と言う。
「申告書ってこれ?」と、空港の税関で申告した際の控えを見せると、「そうそう。ちょっと貸して」とコピーをとり、書類に判子を捺した。そして、「これで何の問題もないわ」と笑った。
次は、同じ上海の中国系銀行。片言の英語を話す窓口の女性に訊いてみる。「両替の上限は、1回5000米ドルよ」と、こちらも自信満々に答え、「一体いくら両替したいの?」と訊いてくる。
1万米ドルぐらいだと答えると、彼女は言った。「それなら2回行けばいいじゃない」。ここでも、1回5000米ドルの上限は何の意味もなかった。
ここまででわかったことは、「中国の銀行はフレキシビリティが高い」「予想に反して、銀行員は愛想がいい」ということだ。
こんな話もある。上海の外資系銀行A支店でのこと。テレフォン・バンキングのPIN(暗証番号)がわからなくなったので、再発行してもらった。
PINを受け取って、「これって今すぐ使えるの?」と聞くと、「セットアップするまで少し時間がかかるはずだから、2時間たったら電話してみてね」と、愛想のいい笑顔で教えてくれた。
2時間後、テレフォン・バンキングにアクセスすると、「PINが間違っています」という。
そこで別の支店で、「PINを発行してもらったんだけど、使えない」「今日受け取ったばかりのPINを入力しただけだ」と説明すると、彼女は言った。「えぇ! 今日? そりゃダメよ。新しいPINが使えるようになるまで1日かかるの」。