2005年12月号掲載
外資ファンド 利回り20%超のからくり
著者紹介
概要
最近、日本のマスコミでは、“ファンド”という言葉がおよそ登場しない日はない。投資ファンド抜きには、経済も産業も語れないほど、その存在感は大きくなっている。投資ファンドはなぜ大きな利益を上げられるのか? 本書では、プロの金融マンがその実態と手口を明かす。併せて、ファンドがもたらす“新たな資本主義”が日本に与える影響についても言及する。
要約
ニッポン放送株騒動の“真の勝者”
2005年前半の世間の話題をさらった、ニッポン放送を巡るライブドアとフジテレビの戦い。
実は、この騒動の陰で、フジ・ライブドアのいずれが勝とうとその結果に関係なく、「利回り20%超」を確保した人々がいる。
それは、ライブドアにニッポン放送株を売ったとされる、外資系ファンド「サウスイースタン・アセットマネジメント」だ。
同社は、今回の騒動の前に、ニッポン放送株全体の13%強を約170億円で取得していた。そして、その全てを短期間で売却し、272億円弱を手にした。つまり、102億円という利益を上げたのだ。その投資利回りは、実に年利回り23%となる。
今回の案件の真の勝者は、ライブドアでもフジテレビでもなく投資ファンドだったのである。
では、投資ファンドとは一体何者なのか?
投資ファンドは、成功報酬制の下で、絶対利回りを追求する、プライベートな運用組織体である。それには、次の4つのタイプがある。
・企業買収ファンド
M&Aコンサルティング(通称、“村上ファンド”)のようにM&A(合併・買収)の手法を取り入れながら企業価値の向上を目指すファンド。
・企業再生ファンド
経営が思わしくない企業に、資金や経営資源を投入して再生することで、投資リターンを狙うファンド。
・不動産投資ファンド
不動産を投資対象とするファンド。90年代に、日本の銀行は不良債権の処理のため、不動産担保の付いた貸出債権を一括売却していた。こうした“不稼動資産”を買い取ったのが、不動産ファンドの始まりである。最近では、優良企業が本社ビルなどの“稼動資産”を流動化する動きもあり、その受け皿として多数の不動産ファンドが設立されている。さらに、購入対象は、都心のビルだけではなく地方の物件や、ゴルフ場、ホテル、温泉旅館などに広がってきている。
・ヘッジファンド
幅広い資産(株、債権、為替商品等)を対象に、デリバティブなどを用いて、絶対リターン(相場の上昇・下落に関わらないリターン)を追求するファンド。80年代に為替取引でイギリス中央銀行と対決し莫大な利益を得たジョージ・ソロス氏のクオンタムファンドなどが有名だ。世界中で約8000のヘッジファンドがあるといわれるが、運用者数名の小さな会社(“ブティック”と呼ばれる)も多く、運用手法や投資対象などそのタイプは千差万別だ。