2005年12月号掲載
CM化するニッポン なぜテレビが面白くなくなったのか
著者紹介
概要
「タイアップ広告」「番組内広告」「バーター取引」「記事体広告」「戦略的PR」…。マスコミの裏側を知り尽くしたプロが、メディアの新常識を明かす。本書を読むと、公正中立であるはずのマスコミやジャーナリズムは全く頼りにならない、という事実に嫌というほど気づかされるだろう。見る目の肥えた賢い読者・消費者になるために必読の1冊!
要約
全てのブームは作られている!
「貧困をなくすこと」を目的とする市民運動というフレコミで話題を呼んでいる“ホワイトバンド”。“ヨン様”を追いかけるオバサマ方…。
こうしたブームは、自然に起きているのではない。ブームになるように意図的に、メディアに取り上げられるように仕掛けられているのだ。
では、その仕掛けとは ——
テレビは広告を放送するビジネス
テレビ局にとって本当の商品は“広告”である。番組は、広告を売るための客寄せにすぎない。
その証拠に、緊急ニュースのテロップが、番組中に出されることはあっても、CM中に流れることはない。人命にかかわり、1分1秒を争う災害速報であっても、CMの放送が優先される。
民放テレビは、創業の時から広告とともにあった。当初はその関係は緩やかだったが、番組にCM提供がつくようになると、番組作りにスポンサー(広告主)への配慮が入るようになる。
そして、次第にその関係は密になっていき、商品を番組に登場させる、それもなるべく番組の内容に応じて使うという演出が盛んになった。
例えば、SMAPの木村拓哉が主人公のレーサーを演じたドラマ「エンジン」は、そうした「タイアップ広告」の流れの上にある。
このドラマは、テレビドラマ初の本格レーシングドラマとして話題を振りまいたにもかかわらず、レースシーンと呼べるものはわずか3回しかなかった。では、なぜ主人公はレーシングドライバーでなければならなかったのか?
それは、スポンサーがトヨタだったからだ。つまり、トヨタが自社のイメージアップのために「作らせた」ドラマだったのである。
ドラマで使われたレーシングカーは、トヨタのグループ会社製のF−3マシン。サーキットは、トヨタ傘下の富士スピードウェイである。