2006年8月号掲載
老会話
著者紹介
概要
年寄りの話は回りくどいと感じる人。レジでもたつく高齢者にイライラするコンビニの店員。高齢者市場に参入したものの、どうもうまくいかないと頭を痛める経営者…。高齢化社会の到来で誰もが悩むこと、それは高齢者との円滑なコミュニケーションである。本書は、そんな悩みを持つ人のための「老会話」入門書。家庭やビジネスの現場で大いに役立つ1冊だ。
要約
「老会話」の時代がやってきた
近年、「振り込め詐欺」で多くの高齢者の被害が発生した。また地震、水害、雪害などの大きな自然災害で、高齢者の被害が報じられてもいる。
こうした中、田舎に住む老親の「呼び寄せ」を考える人は少なくない。だが、これがお互いに大変なストレスとなる場合がある。それは、高齢者との関係には大きな課題や壁があるからだ。
年を重ねるにつれ、コミュニケーション能力において「若い時と同じようにはいかないな」と自ら実感したり、周りが「あれ? 昔とはちょっと違うな」と思ったりする時がやってくる。
これは視覚、聴覚といった感覚器官や、その大本である脳機能の加齢による変化が原因である。
例えば、会話中に人の名前が出てこない場面が増えてきたという現象は、脳の中でも記憶をつかさどる側頭葉の老化との関係が指摘されている。
また、老化に伴う前頭葉の萎縮は、感情面にも大きな影響を与える。気力が落ちる、感情の切り替えがうまくいかなくなるなどは、そのせいだといわれている。
そこで、必要になるのが「老会話」である。
老会話は、上記のような「加齢によるコミュニケーション力の衰え」を肯定的、共感的に受け止め、高齢者との情報のやりとりをスムーズにするための技術である。
この老会話の基本的な能力は、子供の頃に高齢者との親密な交わりがあったかどうかが大きく影響するといわれている。
あるスーパーの店長は、次のように言う。「パートの若い子を採用する時はね、年寄りと同居していますかって聞くんですよ。同居している人たちは、優しくて、気が利くし、フットワークは軽いし、笑顔がいいし、とにかく大戦力なんです」。
だが、ここ数十年、核家族化は進むばかり。おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に暮らす体験を持つ子供はせいぜい3割程度。老会話を自然に身につけることは難しい状況である。老会話は、学び取らなければならない技術なのだ。