2007年3月号掲載
暴力は親に向かう いま明かされる家庭内暴力の実態
著者紹介
概要
今にも殺人事件に発展しそうな家庭内暴力が、全国の家庭に蔓延している。両親の仲がよく、教育熱心な「普通の家庭」の真面目でおとなしい「普通の子」が、ある日、親に牙をむく。その原因は何なのか? 40年にわたって、教育現場に携わってきた著者が、家庭内暴力の原因や実態を示すと同時に、日本の教育や子育てについて具体的に提言する。
要約
「普通の子」が暴力をふるう理由
近年、全国で子供が親を殺す事件や親が子供を殺す事件が頻発している。事件には至らなくても、いつかそれに発展してもおかしくないような暴力が、全国の家庭に蔓延している。
家庭内暴力に関しては、正確な統計はない。家庭内暴力というのは、よほどの事態でない限り、親は外部に相談しないからだ。従って、統計の数字として表れているのは氷山の一角にすぎない。
では、家庭内暴力はどんな家庭で起こるのか? 答えは「普通の家庭」だ。
両親ともに仲がよく、教育熱心で、経済的にも豊かといった「普通」か「普通」以上の家庭で、家庭内暴力が頻繁に起こっている。
そして、暴力をふるう子供の大半は、実に真面目でおとなしい「普通の子」たちである。
そのため、外からは、平和で何の問題もない家族にしか見えない —— それが、今の家庭内暴力の実態なのだ。
* * *
では、なぜ普通の子が暴力をふるうのか?
原因は色々あるが、最大かつ根本的な原因は、「自分の未来が見えないことへの不安」だ。
家庭内暴力の子は、たいてい何年も家の中に引きこもっている。自分はこの先どうなるのか、就職や結婚はできるのか…。彼らは、普通に働いている若者以上に、未来に対して不安を持っている。
そんな不安に包まれる中で、「何とかしなくては」という焦りや現状への苛立ちが生じてくる。