2007年5月号掲載
意思決定のサイエンス
Original Title :Harvard Business Review Anthology Science of Decision-Making
- 著者
- 出版社
- 発行日2007年3月8日
- 定価2,200円
- ページ数238ページ
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概要
「意思決定」。経営者をはじめ、ビジネスに関わる全ての人にとって重要なこの作業を、“科学”の目で検証した。自分では合理的で客観的な意思決定を下しているつもりでも、実際は違う ―― 。各種事例を挙げ、人が陥りがちな落とし穴を示す。『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』誌に掲載された論文の中から、意思決定に関する論文をまとめたもの。
要約
「意識の壁」が状況判断を曇らせる
2004年9月、メルクは鎮痛剤〈バイオックス〉を市場から回収した。
これまで米国だけでも1億件余り処方されたこの薬は、2000年には薬害が公になっていた。さらに01年にはメルク自身が、バイオックスを処方された患者の14.6%が心臓血管系障害を発症したという報告書を連邦政府に提出している。
にもかかわらず、メルクの経営幹部はなぜこれほどの期間、市場に温存し続けたのだろうか。
その過失は、意図して非倫理的な行為を犯したというよりも、意思決定の質にあったといえる。
「意識の壁」現象というものがある。
意思決定のプロセスに、意識の壁が生まれると、人間は簡単に入手できる情報でも、それを探したり、使ったり、伝えたりすることが難しくなる。
ほとんどの人が、意識に壁が生まれる仕組みに気づかない。そして、この壁を認識できないと、バイオックスの例からもわかるように、ゆゆしき事態が招かれる場合がある。
ありていに言えば、メルクの経営者に生じた意識の壁の中に、鎮痛効果や利益は存在していたが、危険性は壁の外にあったのだ。
意識の壁は意思決定プロセスの様々な段階で発生しうる。健全な意思決定を下すうえで不可欠な重要情報を見過ごしたり、探し損ねたりする。また、重要情報を手にしていても、関連性に気づかず利用せずにいることがある。
なぜ、重要情報を見落としてしまうのか?
課題に取り組むうえで集中力が大切なのは間違いないが、意識の壁は集中力の産物でもある。
そのことを示す、調査がある。