2007年6月号掲載
新帝国主義論 この繁栄はいつまで続くか
著者紹介
概要
欧米先進国ばかりか、中国やインドを筆頭とする新興諸国でも好況が続いている。世界同時完全好況といえるこの状況が意味するもの、それは“世界経済は1つになった”ということだ。と同時に、従来の経済学の常識が通用しない未踏の領域に入った、ということでもある。本書では、歴史上でも稀有の特徴を持つ、この世界経済の運動法則、そして行く末を見通す。
要約
言葉を失う経済学
前例のない、世界経済の繁栄が続いている。
不況に陥っている国は1つもない。恐らく、歴史上初めての世界同時完全好況である。
そして、不思議な好況である。これまでの経済常識が通用しない現象が多発しているのだ。
高成長が続き、主要国の企業は空前の利益を得ているのに、低金利が続いている。主要国はほぼ完全雇用状態で、かつ原油・資源高なのに、インフレにならない。各国揃って金融引き締めをしているのに、流動性は潤沢である…。
なぜ、こんな好都合な非常識が起きるのか?
例えば、米国では好況下で低金利が続いているが、それはどうしてなのか。
過去25年間、米国の長期金利は名目GDP成長率と連動し、かつその水準は名目成長率を上回っていた。
しかし2003年以降、この相関が崩れ、長期金利は名目GDP成長率を大幅に下回り続けている。
経済のリターンが高く、そのコストである金利が異様に低水準という現実は好都合なことである。だが、話がうますぎて気味が悪い。
この新現象については、いくつかの仮説が提示されてきた。
いわく、「金融緩和で流動性が潤沢になり、投資家が求める期間プレミアムが低下した」、「投資家、経営者が先行きに悲観的であるため、資金需要が高まらない」、「米国以外の諸国で過剰貯蓄が起こり、行き場を失った資金が米国に流入している」等々。