2008年2月号掲載
日本は没落する
著者紹介
概要
社会の「幼児化」や「脳力」の低下により、日本は没落する ―― 。このように危惧する著者が、経済、教育など様々な面からその根拠を示しつつ、警鐘を鳴らす。年金等の財政危機、新興国での競争に疲弊する企業、教育の弱体化、そして国民の意欲の低下。こうした現状が改められない限り、国家の没落という事態は避けられないことを痛感させられる。
要約
ポスト産業資本主義の時代
2007年8月、世界の金融界を「サブプライム・ショック」が走り抜けた。
その原因になったサブプライムローンとは、米国で金融機関が信用力の低い個人向けに行った融資のことである。米国の不動産価格の低迷等で融資の返済率が低下した結果、欧州のファンドの経営が行き詰まり、世界的な大問題に発展したのだ。
20〜30年前であれば全く問題にならなかったであろう一国内の特定の問題が世界を震撼させたこの現象は、資本主義社会の歴史的な転換を象徴する出来事といえる。
金余りの時代
21世紀の今、産業資本主義の時代は終焉し、世界は「ポスト産業資本主義」の時代に移行しつつある。それは資本=マネーの果たす役割が、前世紀までと根本的に異なってきたことを意味する。
一言で言えば、産業資本主義の時代は「金を追いかける」時代、ポスト産業資本主義の時代は「金が追いかける」時代である。
これまで、国や企業が追い求めたのは資本だった。生産技術の進歩とともに投資機会は拡大し、金を集めて集中投資を行った国や企業が勝った。
しかし、ポスト産業資本主義の時代は違う。この時代は、「金余り」という特徴を持っている。
先進資本主義国はいずれも経済的に成熟し、巨額の資本を蓄積している。さらに、デリバティブや証券化など金融技術の発達で、少額の資金しかなくとも二重三重にレバレッジ(てこ)を利かせることが可能となって、実際に存在している資産をはるかに上回る投資余力が生まれている。
この急激な信用膨張に対する反動こそが、サブプライム問題の真の姿なのである。
金融技術で膨れ上がった資金が世界中の市場を行き交い、さらなる膨張の機会を求めて駆け回る。それがポスト産業資本主義時代の特徴なのだ。
欧米からアジアへ
ポスト産業資本主義への移行の中でもう1つ大きな変化は、「欧米からアジアへ」という流れだ。