2008年3月号掲載
反米大陸 中南米がアメリカにつきつけるNO!
- 著者
- 出版社
- 発行日2007年12月19日
- 定価770円
- ページ数218ページ
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著者紹介
概要
これまで“米国の裏庭”として、いいようにされてきた中南米諸国。1990年代には、米国の圧力の下で、新自由主義政策が推進された結果、格差が拡大し、社会はボロボロになった。そんな中南米の国々が今、米国に対しこぞって「NO!」を唱え始めている。もはや「反米大陸」と化した中南米の現状と歴史、そして今後について、かの地をよく知る新聞記者が語る。
要約
中南米の新時代
「9.11」といえば、米国人は2001年のテロのことしか頭にないが、南米チリの人々は、1973年のこの日を思い起こす。
民主主義の選挙で生まれた政権が、軍部のクーデターで倒され、長期にわたる軍事独裁が始まった日だからだ。
クーデターを背後で操ったのは、米国の中央情報局(CIA)であり、資金を出したのは米国の企業だった。この時、チリの人々にとっては、米国こそがテロの黒幕だったのだ。
チリに限らない。これまで中南米で、反米につながるような政権が誕生するたびに、米国は露骨に介入した。経済制裁をしたり、反政府ゲリラを組織して内戦を起こしたり、果ては武力で政府を押しつぶし、実力で親米政権を打ち立てた。
中南米の歴史は、米国による侵略と支配の歴史だったといえる。
だが今、その中南米で米国離れが進んでいる。大統領選挙で次々に左派政権が誕生し、南米は「反米大陸」になってしまった —— 。
反米化した石油大国
ベネズエラは南米の北の端、カリブ海に面する石油大国だ。この国では、反米を掲げるウゴ・チャベスが大統領選挙で当選した98年まで、米国に追従する政権が続いた。
76年の石油産業国有化で生まれた国営ベネズエラ石油には、大統領の権限も及ばず、役員は大統領の20倍の月収を手にしていた。ところが、石油と無関係な国民は、利益のおこぼれにさえあずかれなかった。
その後80年代前半から続いた経済の停滞で、中間層が没落し、貧困層は極貧層に転落する。貧富の格差は絶望的なまでに広がっていった。
こうした中、「貧者の救済」を掲げ、98年の大統領選挙に立候補したチャベスは圧勝し、「民主的革命」の開始を宣言する。石油の富を国民に平等に分けるために、国家の仕組みを変えようとしたのだ。
彼は、それまでの政権が目を向けなかったスラムや地方などに、石油の収入をつぎ込んだ。