2008年4月号掲載
戦略不全の因果 1013社の明暗はどこで分かれたのか
著者紹介
概要
かつて、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という本が著されるほど、力強い発展を誇った日本。しかし近年、その発展の原動力だった日本企業の様子がおかしい。多くの企業が低収益に苦しみ、新たな成長のための未来図を描けずにいる。その原因は何か? 過去40年の企業財務データを分析した結果、浮かび上がってきたもの、それは「戦略不全」の4文字だった!
要約
戦略不全企業の実態
日本企業はなぜ、低収益で苦しんでいるのか?職場を訪ね歩いても、答えの糸口は見つからない。むしろ社員の実務能力の高さに感心するばかりだ。
それなのに利益が伴わないとすれば、能力の活かし方が悪い、すなわち戦略が機能不全を起こしていると考える他はない。
では、その戦略不全の真因は何か?
それを突き止めるには、戦略不全企業を特定し、その背景を分析する必要がある。
そこで、1部上場企業1013社の1960〜99年の財務データに、戦略が機能した程度を評価する3つの“ものさし”を当てはめて検討すると ——
①最高益更新率
これは、利益成長の持続力を測る尺度である。営業利益が実質ベースで過去最高益を上回った年の数を数え、それを全体に対する割合で示す。
この尺度で見ると、利益成長の持続力においては、セブン−イレブン・ジャパン、花王、セコムの3社が群を抜いている。
②利益水準倍率
これは、利益成長の跳躍力を測る尺度である。対象期間を前・後期に分けて、営業利益の平均値が前期と後期の間で何倍に飛躍したのかを表す。
この尺度で測ると、任天堂、キヤノン、ヤマト運輸などが、利益成長の跳躍力に秀でている。
③最下限利益率
これは、経営戦略のリスクを測る尺度である。営業利益から特別損失と営業外費用と配当金を差し引いて残る額を実質化・累積化して、それを累積実質売上高で相対化して示す。
実際に、営業利益から調整項目を全て引くと、上場企業1013社のうち495社が赤字になる。ほぼ2社に1社が赤字だ。現実にはその赤字を特別利益などで補填しているわけだが、これではどう見ても戦略が機能しているとは言い難い。