2008年4月号掲載
アラブの大富豪
著者紹介
概要
中東の石油と天然ガスの埋蔵量総額は、1京3000兆円とも言われる。この莫大なオイル・マネーが今、世界のマーケットを賑わせているが、その担い手の姿は今ひとつ見えない。本書では、30年近く中東ビジネスと関わってきた著者が、サウジアラビア、ドバイなどの王室を横糸に、オイル・マネーの流れを縦糸に、現代アラブの大富豪とオイル・マネーの実態に迫る。
要約
サウジアラビア王家と御用商人
アラブの富の源泉は、石油と天然ガスである。そしてアラブ産油国の多くは王制国家であり、石油の富は王家とその一族たちが独占している。
1970年代の2度のオイル・ショックで、莫大な富を手にし、にわか成金となった王族たちは、その富を湯水のごとく浪費した。
そして今、再びオイル・ブームが訪れ、王族たちに莫大な富をもたらしている。だが、今回の彼らの金の使い方は、以前のような散財とは違う。
彼らは、潤沢なオイル・マネーを欧米企業の買収などに投資し始めた。投資の醍醐味を覚え、世界的なマネー・ゲームに参加しているのである。
そんな現代アラブの大富豪と、世界を席巻するオイル・マネーの実態を見ると ——
「サウド家」の「アラビア」
サウジアラビアの地下には、世界全体の4分の1の石油が眠っている。それを一手に握っているのがサウド王家だ。
サウジアラビアとはそもそも「サウド家」が支配する「アラビア半島の国」という意味である。
19世紀末、後にサウジアラビアの初代国王となるアブドルアジズは、アラビア半島での勢力争いでラシード家に敗れた父とともにクウェイトに落ち延び、少年期をそこで過ごした。
その頃、大英帝国はアラビア半島とイランを巡ってオスマン・トルコと覇を競っていた。
大英帝国は沿岸の首長国を次々と傘下に収め、ペルシャ湾最奥部にあるクウェイトに対しても、自国の保護領になるよう迫っていた。
こうした状況を横から眺めていた22歳の青年アブドルアジズはわずか40人の手勢を従え、1902年、密かに故郷のリヤドに舞い戻った。