2008年4月号掲載
脳と創造性 「この私」というクオリアへ
著者紹介
概要
コンピュータの時代だからこそ、我々人間には機械にはない創造性が求められている。その創造性を、「脳科学」という切り口から解説したのが本書だ。創造性は特別なものではなく、誰もが普段から発揮しているとの考え方を出発点に、人間の創造性の起源や、創造力が発揮される仕組みを明らかにする。アイデア発想法などのハウツウ書を読む前に読んでおきたい1冊。
要約
創造性は天才の特権ではない
コンピュータが発達すればするほど、人間は、コンピュータにはできないこと、すなわち、“創造性”を発揮することが重要になってくる。
では、どうすれば創造的になれるのか? その秘密は、我々の脳の仕組みの中に隠されている。
大抵の人は、創造的であるとは、一握りの天才にのみ許されることだと考えているかもしれない。
だが、人間の脳の特性という視点から見れば、天才がやっていることと、我々が日常普通にやっていることの間には本質的な差はない。「それまでになかった新しいものを生み出している」という点において、あまり変わりはないのだ。
生み出されたものが傑作であるかどうかは、生きる現場において二次的な意味しか持たない。
人々がそれぞれの生きる現場において、様々な工夫を凝らす時、そこで生み出されたものは必ずや生において切実な意味を持ち、価値を持つ。
それが他人から傑作として評価されるかどうかは、半ば偶然によって左右されることである。
傑作を生み出すことよりも、自分が置かれた状況の中で一生懸命に生きることの方が第一義的なのである。
他人と比べ、自分には創造性がないと思い込む。そんな思い込みを捨てることからしか、自らの中に眠る創造性を解放するプロセスは始まらない。
そして人間の創造性を、意識的なコントロールの結果と考えると、道を誤る。創造性は、その大半が無意識のうちに起こる脳内のプロセスである。
その意味では、自然の営み一般とそれほど本質的に異なるわけではない。