2008年5月号掲載
クリエイティブ資本論 新たな経済階級の台頭
Original Title :The Rise of the Creative Class
- 著者
- 出版社
- 発行日2008年2月28日
- 定価3,080円
- ページ数484ページ
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著者紹介
概要
「クリエイティブ・クラス」。今、この全く新しい知識労働者階級が社会の支配階層になりつつある ―― 。こう指摘する著者が、人のクリエイティビティが自由に発揮されるよう経済・社会を再構築すれば、企業や都市はむろん地球全体の富も最大になることを、様々なデータを基に論じる。米国でベストセラーとなり、その後15カ国以上で翻訳された、新たな“資本論”。
要約
「クリエイティブ経済」の時代
過去1世紀、特に1950年以降、米国ではクリエイティビティが劇的に開花した。研究開発投資が増え、結果として特許の取得数は増加し、クリエイティブな職業に就く人も増加した。
例えば、米国全体の研究開発費は53年には約50億ドルだったが、2000年には2500億ドル以上に増加した。また、科学者や技術者の数も、1900年は人口10万人当たり55人だったが、99年には1800人となった。
研究開発投資の劇的な増加は、ソフトウエアやバイオテクノロジーなど、新しい産業の台頭を後押しした。
また、クリエイティブな変化は製品のイノベーションだけでなく、製造法にも広がっている。クリエイティブな工場が台頭し、工場の労働者はアイデアや知的な才能で貢献できるようになった。
ソニーの創業者・盛田昭夫は、こう述べている。
「社員の1人1人が意思決定に貢献することが大事であり、工場労働者といえども、その働きを単なる肉体労働や機械的労働にとどめておくべきではない」
そのメッセージは他の企業にも浸透し、危機に瀕したIBMは「Think」(考えよ)というスローガンを掲げて復活し、IBMの工場はクリエイティブな工場となった。
このような変化は全てが並行して起こり、今や収斂しつつある。我々はハイテク産業のイノベーションの急増を目にしているだけではなく、クリエイティビティが経済や社会のあらゆる部門に浸透していく時代を迎えているのである。
クリエイティブ・クラスとは
こうした「クリエイティブ経済」の台頭に伴い、新しく台頭してきた階層が「クリエイティブ・クラス」である。この階層は、2つの要素から成る。
まず中核となる「スーパー・クリエイティブ・コア」には、科学者、技術者、大学教授、小説家、芸術家、デザイナー、建築家の他に、現代社会の思潮をリードする人、例えばノンフィクション作家、文化人、シンクタンク研究員などを含む。彼らの仕事は、すぐに社会や実用に転換できるような新しい形式やデザインを生み出すことだ。
このスーパー・クリエイティブ・コアの周りに「クリエイティブ・プロフェッショナル」が位置する。ハイテク、金融、法律、医療、企業経営など、様々な知識集約型産業で働く人々である。