2008年7月号掲載
カーライル 世界最大級プライベート・エクイティ投資会社の日本戦略
著者紹介
概要
運用資産9兆円を誇る「カーライル・グループ」。世界3大ファンドの一角を占める企業でありながら、その実態は謎に包まれている。主力事業である「バイアウト・ファンド」とは何か? “物言う投資家”として知られる「アクティビスト・ファンド」とは、どこが違うのか? 彼らがいち早く参入した日本市場での投資事例を紹介しながら、その実態や狙いを明らかにする。
要約
カーライルが目指すもの
カーライル・グループは、運用資産9兆円、ワシントンDCを本拠地として世界中に34カ所の事務所を抱える、世界最大級のプライベート・エクイティ(主に非上場企業の株式に投資を行うファンド)である。
ブラックストーン・グループ、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)とともに、グローバル3大ファンドの一角をなしている。
カーライル・グループは3大ファンドの中で最も早く日本に上陸し、2004年には日本のDDIポケットに資本参加、ウィルコムが誕生した。
プライベート・エクイティという、秘密のベールに包まれた世界で活動するカーライルは、21世紀の世界を相手に何をしようとしているのか?
カーライル・グループの会長であり、IBMを再興させた伝説の経営者として知られるルイス・ガースナーは、次のように語る。
「なぜプライベート・エクイティがこれほど世界中で伸びているのか、あらゆるビジネスマンはその理由を理解する必要があります。それは世界中で今、企業の数が余剰になっているのです」
確かに彼の言う通り、世界中に過剰な生産能力、過剰なブランドがひしめいている。
1998年、ソニーのある幹部は「日本にテレビメーカーは10社も要らない」と言ったが、10年後の今、メーカーの数は半減しようとしている。
ITにより世界がつながったことで、どの業界でもどんどん新しい競争相手が現れるようになり、競争が激化している。この新しい競争環境の下で、競合他社をしのぐためには、自社の戦う土俵をさらに絞り込まなければならない。
欧米でもそうだが、特に日本では、企業の数や大企業の中の事業部門の数があまりに多すぎる。もっと中核部門を研ぎ澄まさなければならないし、ノンコアの部門は切り離さねばならない。
プライベート・エクイティは、こうした大きな潮流の中で生き残りに賭ける企業を支援するために必要とされている —— ガースナーはそう語る。