2008年8月号掲載

「心の傷」は言ったもん勝ち

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著者紹介

概要

何でも「セクハラ」と叫ぶ女性、「心の病」を理由に会社を休みながら、遊ぶ人…。「心に傷を受けた」と訴えれば、それがそのまま通り、後はやりたい放題。近年、そうした傾向が目立つ。なぜこうも過剰な被害者意識をかざす人間が増えたのか。「被害者帝国主義」とも言うべき現状を憂える精神科医が、その実態を分析し、精神力を強くするための処方箋を示す。

要約

朝青龍問題と「心の病」

 2007年7月、横綱朝青龍が腰痛などで地方巡業を休みながら、母国モンゴルでサッカーをしていたことが大問題になった。これはけしからんということで、相撲協会は2場所出場停止、その間、自宅謹慎という処分を下した。

 ところが、その後、事態は意外な展開を見せる。朝青龍は自宅にこもったまま、食事もとれず、誰とも話ができないというのだ。

 結局、精神科医により「解離性障害」という診断が下され、彼は医師同伴でモンゴルへ帰国した。その後の顛末は周知の通り。08年1月に土俵に復帰し、力士としては期待通りの活躍をしている。

 この騒動の結果を見ると、朝青龍の希望がすっかり通った格好だ。果たしてこれは、「心の病」のため、やむを得なかったことなのだろうか?

 心の病を患った人への接し方の「常識」は、以前とは随分変わった。

 「安易に『頑張れ』などと言ってはだめ」「サボりに見えるかもしれないけれども、一番辛いのは本人」。こんな考え方を聞いた人も多いだろう。

 こうした昨今の風潮を考えれば、病気の治療を最優先させた今回の対応は良かった、ということになるのかもしれない。

 だが、朝青龍は本当に心の病だったのだろうか。一部でささやかれているように、実は仮病だったという可能性も完全には否定できない。

 それは、無意識に「休みたい」などの願望があり、そのために都合のいい症状が出てしまう、という可能性だ。これを、「疾病利得」という。

 似たようなことは他にもある。「PTSD(外傷性ストレス障害)」がそうだ。ベトナム戦争からの帰還兵に、いつまでも意欲が回復せず、人とも会いたがらない人たちがいる、ということから「発見」されたものである。

この本の要約を読んだ方は、
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マーサ・スタウト 草思社

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