2008年11月号掲載

意思決定のマネジメント

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著者紹介

概要

経営者や幹部は日々、様々な意思決定を下さねばならない。投資、市場への参入と撤退、M&A…。本書は、そうした意思決定に関する問題を、マネジメントの根源的な問題として捉え、最新の研究成果を踏まえつつ解説する。ここに登場する様々な意思決定に関する“バイアス”を少しでも意識することで、より優れた意思決定が可能になるだろう。

要約

未来予測と投資の意思決定

 経営の実務家は、少しでも優れた経営をしたいと願っている。そのために専門書を読み、ビジネススクールに通って経営学を学ぶ。

 しかし、それらをどんなに学んでも、個別の意思決定において、どの選択肢を選ぶべきかは教えてくれない。個別状況の意思決定は、最終的には経営者自身が行うしかない。

 意思決定の際、留意すべきは、人間の意思決定は様々なバイアスを帯びている、ということだ。

 ビジネスでは、商品の売れ行きや原材料の価格などの予測を欠かすことができないが、そうした未来予測、そして特に投資の意思決定においては、次のバイアスに注意する必要がある。

ギャンブラーの錯誤

 例えば、あなたがカジノでルーレットを楽しんでおり、今、5回連続して赤が出たとする。あなたはこのことをどう感じるだろうか。

 ルーレットで5回も連続して赤が出ると、「そろそろ黒が出る頃合いではないか」と考える人が多い。しかし、何回赤が続けて出ていようと、次に黒が出る確率は2分の1のままである。

 これは、「ギャンブラーの錯誤」と呼ばれる現象だ。人間は時系列的なランダムなデータの中に、勝手に「流れ」のような規則性を見いだす傾向があり、適切に確率的な予測ができなくなるのだ。

 多くの投資家は、株価の動きを示すグラフを見て、そこに何らかのパターンを見いだしてしまう。だが研究によれば、過去の値動きとの相関はごくわずかだ。

正常性バイアス

 災害時でもパニックにならず、火災報知器が鳴っても「誤報だろう」と決めつけ、何の行動も取らない人が多いのだ。

 事実、9.11テロの標的となった世界貿易センタービルでは、情報を確認するためオフィスにとどまっているうちに逃げ遅れた人が多かった。

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