2008年11月号掲載
大暴落 1929
Original Title :The Great Crash 1929
- 著者
- 出版社
- 発行日2008年9月29日
- 定価2,420円
- ページ数309ページ
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著者紹介
概要
1929年のニューヨーク株式市場での株価大暴落、世界大恐慌へと至る経緯を分析し、バブルの発生と崩壊の要因を明らかにする。富裕層に富が集まり、投機熱が高まると、経済・社会はどうなるのか。その時、政治家はいかに対応するのか。歴史の中で、幾度となく繰り返されるバブルの本質に迫る。1954年刊の恐慌論の名著を読みやすい新訳で復刊したもの。
要約
時代の空気が生むバブル
米国経済が好調だった1928年12月4日。クーリッジ大統領は任期最後の一般教書演説で、こう述べた。「いまだかつてない幸福な時をこうして迎えられるのは、ひとえに国民の気高い精神とアメリカ人気質のおかげである」。
確かに、米国人はそうした美点を備えてはいたが、手っ取り早く金持ちになりたいという欲望も並外れて強かった。それが図らずも暴露された最初の例を、フロリダに見ることができる。
20年代半ばのフロリダでは、大規模な不動産ブームが起きていた。このブームには、典型的な投機バブルに共通する要素が全て備わっている。
まずは、売り込みの決め手である。フロリダの場合、それは気候だった。所得水準の向上につれ、暖かいフロリダで冬を過ごす人が増え始めた。
この決め手の上に、投機を誘う虚構の世界が築き上げられていった。これからはレジャーの時代だ、大勢がどっと押し寄せ、海辺はもちろん沼地や林もみな値打ちが出る…。
とは言え、夢だけでは投機は成り立たない。フロリダでは、実際に土地が区画分けされ、10%の手付金だけで売り出された。
土地の大半は人が住めそうな土地ではなかったが、そんなことはどうでもよかった。問題なのは日に日に値上がりし、2週間後には売って利益を手にできるかもしれない、ということだけだった。
値が上がるという事実だけに目を奪われ、なぜ上がるかを考えなくなるのも、投機の特徴である。
こうして、25年までは買い手が押し寄せた。だが、26年春になると買い手は減り、秋にはハリケーンがフロリダを襲い、数百名の死者が出た。
しかし、それでもブームはまた始まると、マスコミは書き立てた。実際には不動産バブルは終わっているのに、終わりが来たことをなかなか認めない点も、投機バブルのパターンである。
フロリダのバブルは、20年代という時代の空気を伝える最初の例である。そこには、中流層が裕福になるのは神の思し召しだという確信がある。