2009年1月号掲載
すすんでダマされる人たち ネットに潜むカウンターナレッジの危険な罠
Original Title :COUNTERKNOWLEDGE
- 著者
- 出版社
- 発行日2008年12月15日
- 定価1,760円
- ページ数229ページ
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著者紹介
概要
21世紀の今日、科学や医療は著しい進歩を遂げ、また情報公開も進んでいる。にもかかわらず、根拠のない陰謀論や「サプリメントを飲めばガンが治る」といった話が、インターネットや書籍などを通じて世界中に拡がっている。なぜ、人々はいとも簡単にデマの類を信じてしまうのか? その要因を分析しながら、現代社会が抱える問題を明らかにする。
要約
世界中に蔓延する「デマ」
今、次のような話が世界中に氾濫している。
- ・合衆国政府は、9.11同時多発テロ事件の計画について、あらかじめ知っていた。
- ・子供の自閉症とMMRワクチン(麻疹、耳下腺炎、風疹の3種混合ワクチン)接種の間には何らかの関連がある。
- ・中国艦隊は15世紀初めに世界を周航しており、コロンブスより70年早くアメリカ大陸に到着していた。
こうした話は、一流の出版社から出た本で紹介され、新聞のコラムニストたちが敬意を持って論じ、政治家がそれを引用し、インターネットでも広まっている。
つまり、事実と信じている人は極めて多いのだが、これらの話は全てでたらめである。これが「反知識(カウンターナレッジ)」、要するに「がせねた」だ。
こうした知識は、見せかけの巧妙さのおかげで、教育を受けた人にも真剣に受けとめられている。
今の時代、科学や歴史に関する情報の真偽を確かめる方法は、昔とは比べものにならないほど発達している。だが不思議なことに、ごく基本的な検証にも耐えられないような情報に、多くの人々があっさり飛びついてしまうのだ。
合衆国政府による「陰謀説」
そんな一例が、9.11同時多発テロ事件が合衆国政府によって引き起こされたとする陰謀説だ。
ドキュメンタリー映画『ルース・チェンジ』は、この陰謀説に基づいて作られたものである。その一部はインターネット上で7カ国語で放映され、DVDも製作されている。
この映画のオリジナル30分版は、ニューヨークの映画制作者3人が、わずか6000ドルの制作費で作った。
コンピュータ・グラフィックスの航空機が標的に向かって滑空し、高層ビルが次々と倒壊していく。背景にはファンキーな音楽が流れており、俗受けする映画なのは確かだ。
制作者たちは、合衆国政府の関与という結論を導き出すために、国防総省(ペンタゴン)に突入したのは旅客機でなくミサイルだとし、ツインタワーは火災でなく意図的な爆破によって倒壊したと主張している。
だが、この主張を裏付ける証言や証拠は、信用に足るものではない。