2009年9月号掲載
世阿弥に学ぶ100年ブランドの本質
- 著者
- 出版社
- 発行日2009年7月3日
- 定価1,540円
- ページ数207ページ
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著者紹介
概要
多くのブランドは、顧客に「楽しみ=うれしさ」を提供することを行動の原点とする。そして、そのために必要な知恵を、現場の試行錯誤の中で育んできた。能楽者・世阿弥の著作には、こうした頭と体に宿る知恵 ―― 企業が知るべき大切なことが数多く含まれる。そう指摘する著者が、「初心忘るべからず」等、数々の世阿弥の言葉から、ブランド作りの要諦を読み解く。
要約
「顧客のうれしさ」が出発点
強いブランドの多くは、顧客に「楽しみ=うれしさ」を提供することを行動の原点としている。
そのようなブランドにいつも突き付けられている問いは、次のようなものである。
「顧客のうれしさとは何か」「それはどのようにして生まれるのか」「それを提供するために、ブランドは何をしなければいけないか」…。
多くのブランドは、試行錯誤を通して、これらの課題について曖昧な形で知恵を育んできている。そうしたものを誰もが理解できる形で取り出し、叙述するのは難しい。そう思われてきた。
ところが、まさにそれにぴったりの著述が、600年ほど前の日本にあった。それは能楽者、世阿弥の『風姿花伝』『花鏡』を中心とする著作だ。
これらの世阿弥の体系は、自分の座の存続を危ぶんで残した能楽の世界の秘伝であり、それは、そのまま現代ブランド道の最高の教典になる。
うれしさが全ての始まり
能は何のためにあるのか?
世阿弥は、「花」、すなわち観客のうれしさのためだと言う。観客のうれしさを意味するこの花は、世阿弥の全ての議論の根底にある基本理念だ。
「花が美しい」と言うと、その色、形、香りが心地よいことを思い浮かべるが、彼の言う花は、そういった美しさというよりは、いつ咲くかわからない、いつの間にか散ってなくなってしまう、という「意外な変化」や「驚き」を指す。
花について、世阿弥は、次のように述べている。
―― 花は、四季折々の咲くべき時に咲き、また散るからこそ、珍しく感じられ、もて囃される。そして能楽も同様に、人の心に珍しいと思われる所こそが面白いのであり、同じ風体ばかりを演じず、変化を持たせなくてはならない。