2009年11月号掲載

代議士の誕生

Original Title :Election Campaigning Japanese Style

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著者紹介

概要

1967年の衆院選で初当選した自民党新人候補、佐藤文生氏の選挙運動を追い、日本の草の根民主主義の実態を描いた『代議士の誕生』。この名著が、2009年8月の総選挙における自民党の大敗を分析した論稿「政権交代がなぜ今起きたのか」を新たに加え、新訳で蘇った!かつての選挙運動と現状とを比べることで、何が政治を変えたのか、様々なことが見えてくる。

要約

政権交代がなぜ今起きたのか

 2009年8月30日は、日本の政治史にとって歴史的な日であった。

 総選挙の結果、政権交代が現実となったが、それは単なる政権交代ではなく、「戦後日本の政党政治の終焉」を意味する。

 民主党の勝利、自民党の敗北の原因を探ると、この選挙が今までの政党政治の崩壊を意味していることが明らかになる。

 麻生首相の不人気は、この選挙の結果の説明にはならない。今まで麻生首相よりも支持率が低い総理大臣はいたが、政権は変わらなかった。

 興味深いのは、民主党の主な政策に賛成する有権者も多くなかったことだ。選挙直前の世論調査では「子供手当を評価する」は31%、高速道路の無料化に賛成する人は20%にすぎなかった。

 それでも民主党は圧勝した。なぜか?

自民党の3つの権力基盤の弱体化

 理由は明らかである。日本の社会が大きく変わってきたにもかかわらず、自民党の政治がその変化に追い付けなかったことに尽きる。

 従来、自民党の権力基盤は3つの柱に支えられていた。それが今、全て揺らいでいる。

 自民党はその目標を80年代半ば頃までに見事に実現したが、その後、新しいビジョンを見つけることができなかった。

 時代が変わった今、有権者のニーズは道路や橋やダムにはなく、医療、介護の充実、さらには地方経済の活性化によって若者を地方に引き留めることにある。そういうニーズに応えていないことが、今回の選挙結果を生んだ最大の理由だろう。

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