2009年12月号掲載
ビジネス読解力を伸ばす未来経済入門
著者紹介
概要
経済には「流れ」があり、その本質をつかめれば、次に何が起こりそうか、かなり高い確率で予測することができる ―― 。このように語る著者が、世界および日本の経済を分析し、その未来を読み解く。資源、環境、経済ブロック化、少子高齢社会、新興国市場等々の今後の行方をわかりやすく解説するとともに、国や企業がこれから何をなすべきかについても触れる。
要約
時代の流れを把握する
経済には「流れ」があり、その本質をつかんでいれば、次に何が起こりそうかを、かなり高い確率で言い当てることができる。
すなわち、この流れを把握することが、「未来経済」を読み解くカギとなる。
日本経済と世界経済の「地殻変動」
日本経済の未来を考えるためには、まず、現況を整理し、読み解く必要がある。
その際、押さえるべき大きな流れとして、次の4つがある。
- ①冷戦構造という、日本経済の成長を高めた「ゲタ」がなくなったこと。
- ②冷戦構造崩壊に伴う、世界的供給過剰の中での競争の激化、利益率の減少。
- ③世界経済のブロック化と一体化、それに伴うビジネスの困難さとチャンスの到来。
- ④日本国内のさらなる国際化。
戦後、日本経済が急速に発展した背景には、米ソの「冷戦構造」があった。この冷戦構造こそが、日本に経済成長というゲタをはかせてくれた。
当時、日本はアジアにおける資本主義の広告塔として経済的繁栄が求められた。極東において共産主義が蔓延する危険があったからだ。
そのため、日本は非関税障壁や、欧米より10年以上遅れた会計制度の使用を黙認してもらった。
非関税障壁は外資の進出を妨げ、古い会計制度は、時価会計や減損会計を適用しないおかげで劣化した資産の開示を先送りでき、企業業績を実態以上に良く見せることができた。
要するに、競争上のハンディをもらった上で、国家ぐるみの「底上げ決算」が可能だったわけだ。
だが、冷戦構造が崩壊したことで、米国は日本だけに優遇を認めておく必要がなくなった。
「日本も同じ土俵でやってほしい」というスタンスに変わり、米国は日米構造協議などを通じて強力なプレッシャーを日本にかけてきた。