2010年1月号掲載
会社のデスノート トヨタ、JAL、ヨーカ堂が、なぜ?
著者紹介
概要
2008年のサブプライムショック以降、巨大企業が簡単に破綻している。世界的な景気後退が進む中、経営の舵取りを誤ると、事業縮小、リストラにとどまらず、「会社の死」をも招きかねない。生き残るには、何に気をつけるべきなのか。本書は「価格弾力性」「所得弾力性」など、今一度、経済学の基本に立ち戻り、そこから判断ミスを犯さないためのルールを抽出する。
要約
マクロ経済のレベルで考えよ!
100年に1度と言われるグローバル経済ルールの激変と、世界的な経済後退の中、多くの経営者が試行錯誤をしつつ、生き残りを図っている。
「会社の死」を招かないためには、今、何が起きていて、これから何が起きていくのかを考え、正しい道を選ばなければならない。
従来の競争戦略は通用しない
リーマンショックが起きた2008年9月以降、北米大陸での自動車販売台数は、トヨタも市場全体も対前年で30%台の減少率にまで落ち込んだ。売上が3分の1減ってしまったのだ。
これは、大企業の経営で言えばあり得ない数字だ。この数字を見る限り、今回の危機は、確かに100年に1度しか起きない大激変に見える。
しかし、そう言って、ここで思考を止めるべきではない。なぜなら、100年に1度の大激変は、実はこれから先の時代には何度も訪れるからだ。
今回のような危機は、世界の経済が1つにつながった結果、引き起こされた新しいタイプの危機の連鎖である。今回は米国が震源地だったが、次はインドかもしれないし、中国かもしれない。
これまでの企業は、ミクロ経済のレベルで競争戦略を考えていれば十分だった。だが、これからの企業は、マクロ経済のレベルで起きることに対処する能力を持たなければならない。
実は、経済学の理論を基にすれば、自動車業界全体を襲った激震は予測できたのだ。
リーマンショックが起きた9月以降、米国の実質GDPはマイナス6%前後になった。これは、米国民の年収が6%減ったのと同じ意味になる。
それで、米国人全体が倹約するようになったが、収入が減ってもなかなか減らせない消費もある。
これは、経済学でいう「短期所得弾力性」という数字を見るとわかる。所得弾力性とは、「もし所得が1%減ったとしたら、その商品を買うのに使うお金がどれだけ減るか」という数字のことだ。