2010年2月号掲載
フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略
Original Title :FREE:The Future of a Radical Price
著者紹介
概要
近年、オンラインの世界では、デジタル・コンテンツを「無料」で提供して新たな顧客を獲得し、ビジネスに成功する企業が増えてきた。この無料に基づくビジネスモデルは、今後、オンラインの世界にとどまらず、全ての業界に波及する、と本書は予言。21世紀の経済モデルともなり得る「無料経済」の世界 ―― 無料からお金を生み出す方法について詳述する。
要約
「フリー」の世界とは?
今、この原稿をネットブック・コンピュータ(機能が限定された安価なノートパソコン)で書いている。OSは無料のリナックス。ワープロも無料のグーグル・ドキュメントを使っている。
だが、グーグルは米国で最も儲かっている企業の1つだし、リナックスの生態系(エコシステム)は300億ドル産業だ。
ここに無料(フリー)のパラドックスがある。料金を取らないことで、大金を稼いでいる人々がいるのだ。
“オンライン”という実験がこの15年続けられてきたが、その世界では無料が当たり前だ。
2007年に『ニューヨーク・タイムズ』紙はオンライン版の閲覧を全て無料にした。『ウォールストリート・ジャーナル』は、ニュースやブログなどかなりの部分を無料とし、有料と無料のハイブリッドモデルにしている。
こうした「無料経済」を誕生させたのは、デジタル時代のテクノロジーの進歩だ。
「ムーアの法則」が言う通り、情報処理能力のコストは2年ごとに半分になり、通信帯域幅と記憶容量のコストはそれ以上のペースで下がっている。インターネットはその3つから成り立っているので、コストは相乗効果で低下する。
その結果、オンラインの世界における正味のデフレ率は年50%近くになる。それはつまり、現在の「ユーチューブ」の動画配信にかかる費用が、1年後には半分になっていることを意味する。
今日の最も興味深いビジネスモデルは、無料から金を生み出す道を探すところにある。遅かれ早かれ、全ての会社がフリーを利用する方法や、フリーと競い合う方法を探さざるを得なくなる。
「フリーミアム」が一般的なビジネスモデル
商売で使われる「無料」には多くの意味があり、それを使う色々なビジネスモデルがある。
無料と謳いながら、本当はそうでないこともある。例えば「1つ買えば、もう1つはタダ」という文句は、2つ買うと半額になるという意味だ。