2011年7月号掲載
プロフェッショナル セールスマン 「伝説の営業」と呼ばれた男の壮絶顧客志向
概要
かつて、「伝説の営業」と呼ばれた男がいた。その名は、甲州賢。JTBとリクルートで法人営業を経験後、プルデンシャル生命に移り、それから約11年の間に、週平均5件の生命保険を売り続ける。本書では、惜しくも2009年に急逝した彼のセールス哲学を、顧客、後輩等への取材を基に紹介。「ここまでやるか!?」と思わず唸る“甲州伝説”の数々が披露される。
要約
「伝説の営業」のセールス哲学
甲州賢、という男がいた。
大学卒業後、JTBとリクルートで法人営業を10年半にわたって経験した後、ヘッドハンティングされプルデンシャル生命へ。
それから約11年の間に、生命保険のセールスマンとして販売した保険は3080件を数える。特に最初の2年間には件数554件、毎週平均5.5件の生命保険を100週にわたって販売し続けた。
だが、43回目の夏を迎えようとしていたある晩、突然倒れ、この世を去る。
この“伝説のセールスマン”が遺したセールス体験やセールス道。それは、「人間には、どこまでの可能性が潜在しているのか?」といった問いと私たちを対峙させてくれる。例えば ――
お宅の前に50円玉が落ちていました
大学を卒業してJTBへ就職した甲州は、修学旅行課で6つの私立女子校を担当し、年間100日を超える添乗業務で全国各地へと飛び回っていた。
修学旅行は、既存の取引校に対して、いかに手厚く仕えるかという守りのビジネスといえる。競合他社も取引校を守っていて、新規開拓などほぼできないというのが、当時の業界の常織だった。
だが、甲州は新規セールスに挑んだ。
狙った先は、ある私立女子校。だが、何度通っても守衛がガードを固め校内へ入れてもらえない。
そこで、理事長の自宅を訪ね、専務理事でもある夫人から攻めることにした。通うこと数回、そう簡単に扉は開かない。
甲州は、一計を講じた。インターフォン越しにいつも通りの自己紹介をした後、こう言ったのだ。