2011年9月号掲載
日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人 怒鳴られたら、やさしさを一つでも多く返すんです!
著者紹介
概要
著者は、東京の歓楽街、新宿歌舞伎町のど真ん中にある大型ホテルの女性支配人。ヤクザ、薬物密売業者などが徘徊するホテルを、粘り強い努力により、安全で清潔なホテルに生まれ変わらせた人物で、「歌舞伎町のジャンヌ・ダルク」と呼ばれる。本書は、そんな彼女の奮闘ぶりを紹介するもの。様々なエピソードを織り交ぜつつ、クレーム対応の秘訣が綴られる。
要約
歌舞伎町のホテル支配人として
私は、ある有名ホテルグループに勤める現役支配人である。
任されている店舗があるのは、歓楽街として有名な新宿歌舞伎町。客室数は300以上で、稼働率は年平均90%以上をキープ。グループの中でも常にトップクラスの売上を出している店舗である。
誤解してほしくないのだが、歌舞伎町とはいえ、普通に暮らす分には、めったに怖い目にあうことはない。遊ぶ分には楽しい街だ。だが、歓楽街に店を構える者には、それ相応の覚悟が必要である。
そんな歌舞伎町のホテルの支配人に着任したのは、2004年9月のことである。
一般的には、ホテルの現場修業を経て、支配人に昇進すると思われがちだが、このホテルグループでは支配人は別枠で採用している。
私は全くの異業種からの転職だったが採用され、1カ月の研修後、このホテルに配属された。
着任早々、ホテルで“カツアゲ”が横行!?
そこで私を待ち構えていたのは、想像を絶する光景だった。ホテルのホールにたむろしていたのは、ド派手なスーツに、スキンヘッドのヤクザ。しかも、隅の方では“カツアゲ”が行われていた。
飛んでいって今すぐやめさせたいのだが、やはり足がすくむ。女性のフロントスタッフはブルブル震えて泣いている。そしてヤクザの人垣の中に、きっと被害者が囲まれているはずだ。
それが、逃げようとして浮き足立つ私を、何とかここに踏みとどまらせた。この人たちを置いては逃げられない! 私は人垣の中へと入った。
囲まれていたのは、1人の男性だった。私が入っていって驚いたのは、むしろヤクザの方だった。
「何だ?」