2012年8月号掲載
政権交代はなぜダメだったのか 甦る構造改革
- 著者
- 出版社
- 発行日2012年6月28日
- 定価1,760円
- ページ数225ページ
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著者紹介
概要
震災復興、郵政民営化、財政赤字に歯止めをかける社会保険制度の改革…。これら日本が抱える重要課題に対する、民主党政権の取り組みを検証した。2009年、国民の期待を集めて政権交代を果たしたものの、思うような成果を上げられない民主党政権。彼らの行ったこと、そして、行わなかったことを明らかにし、我々が向き合うべき課題を改めて浮き彫りにする。
要約
「3・11」で浮かび上がった行政の機能不全
3・11の地震・津波・原発事故と、そこから始まった日本の機能不全を目の当たりにして、多くの人々がまるで「第2の敗戦」だと表現した。
多くの被災者がいまだ避難生活を余儀なくされ、安定した仕事を手に入れることができない。
そこには、多くの過ちと行政の機能不全がある。
被害を拡大させた情報開示姿勢
戦後、わが国は国家防衛の責任を米国に丸投げしてきた。危機管理という概念を放棄した結果、「危機にあっては意思決定のメカニズムを絞り込んで一元化する」という常識も失われていたことが、今回の大災害で明らかになった。
例えば、政府は事故直後に避難指示を地元自治体に伝えたとしているが、指示が確認できた自治体はほとんどなく、住民の多くはニュース等により、自分で判断して避難せざるを得なかった。
また政府は、放射性物質の拡散状況を予測するシステム「SPEEDI」の計算結果を、3月23日まで公表しなかった。その結果、住民はどの方向にどこまで避難すれば安全なのかわからず、一部の人は拡散が予測された方向へ避難してしまった。
政府の事故調査・検証委員会は、そもそも政府がデータを国民や国際社会に提供するつもりがなかったと厳しく批判している。
事故直後における政府・東電の過ちは事故調査・検証委員会等で数多く指摘されているが、この巨大な災禍に対する意識は国民と大きく異なる。
東京電力は、社内の事故調査中間報告書で情報開示の遅れ等には触れず、経緯の説明と技術論に終始した。政府は2011年末までに冷温停止状態を宣言することにこだわり、災害が進行中というのに事故収束とも取れる表現をした。
事故を超えて未来に進むためには、フクシマの惨禍を巡る課題を浮き彫りにして、原発に係る政策を根本的に見直す必要がある。
有事に機能しない制度やシステム
3・11では、この他にも、大災害時に機能しない制度やシステムが数多く明らかになった。