2012年8月号掲載

リスク、不確実性、そして想定外

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著者紹介

概要

我々は日々の暮らしの中で、災害や事故、電車の遅れなど様々なリスクに直面する。会社にしてもそう。情報漏洩や不祥事の発生等々のリスクを常に抱えている。本書は、こうしたリスクとともに生きるための材料や考え方を提供するものである。歴史の事象から最近の事件・事故まで、豊富な事例を交え、リスクとは何か、それをどう管理すべきかを平易に説明する。

要約

リスクの源はどこにある

 過去20年、金融機関の不良債権問題に始まり、企業の不祥事や大規模な事故・障害の発生、感染症の流行など、リスクを感じさせる事象が相次ぎ、リスク管理の必要性が叫ばれ続けてきた。

 にもかかわらず、リスクに向き合うことを、誰もが無意識に避けているように思えてならない。

 今は「リスクの時代」である。リスクと無縁の生活や経営ができない以上、リスクと正面から向き合い、リスク管理についてもっと理解し、いかなるリスクがあるのか、どう対処すべきなのかを考える習慣を身につける必要がある。

「うっかりミス」のリスクは高まっている

 リスクの発生や失敗の原因でよくあるのが、単純な不注意、すなわち「うっかり」である。

 ITの発達によって、うっかりミスのリスクは格段に高まった。ちょっとした操作ミスで、取り返しのつかないことになる。

 例えば以前、ある証券会社が「61万円で1株売る」ところを「1円で61万株売る」発注をしてしまい、買い戻しなどで大きな損失を被るという事故があった。

 こうしたうっかりミスが生じた時は、直ちに被害の拡大を防ぐ措置をとることが必要である。

不注意ミスを防ぐ2つの方法

 そして、被害の拡大防止や修復が行われた後、大事なことは、原因の究明と今後の対策である。

 1つは、ミスの原因をできるだけ深く探ることで、ミスが発生する確率を低くするというものだ。

 例えば、異なる作業なのに区別のつきにくい用紙を使うなど、そもそも間違いが生じやすいプロセスになっていないか、また、一部の者に過度に負担がかかる仕事の配分になっていないか、そうした可能性を疑うことが、重要な発見に繋がる。