2012年8月号掲載
あなたの思考をガイドする40の原則 クリティカル シンキング《入門篇》
Original Title :Critical Thinking:A Functional Approach
- 著者
- 出版社
- 発行日1996年9月25日
- 定価2,090円
- ページ数250ページ
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著者紹介
概要
人が物事を考える時、様々なバイアスがかかる。「クリティカルシンキング」とは、そうした影響を十分に自覚した上で、物事を客観的、論理的に考えようというもの。本書では、2人の心理学者が、我々が陥りがちな思考の落とし穴を明らかにしつつ、この思考法の原則を説く。1巻本の原著を2分冊にしたもので、原著の後半は《実践篇》として刊行されている。
要約
クリティカルな思考とは?
クリティカルな思考とは、一体何だろうか。
クリティカルという言葉の本来の意味は「物事を規準に照らして判断する」ことだ。ここから、クリティカルな思考とは「適切な規準や根拠に基づく、論理的で、偏りのない思考」と定義できる。
3つの要素
クリティカルな思考には、次の3つの主要な要素が含まれる。
- ①問題に対して注意深く観察し、じっくり考えようとする態度
- ②論理的な探究法や推論の方法に関する知識
- ③それらの方法を適用する技術
この中で最も重要なのは、①である。だが、クリティカルな思考の態度を身につけることは容易ではない。運動にせよ、読書にせよ、すべからく「良い習慣」を身につけるには、それまで惰性でやってきた習慣を変える努力が必要だからだ。
クリティカルな思考をする人の特性
では、具体的にはどうすればよいのか。
クリティカルな思考をする人には、次の10の特性がある。こうした面を伸ばすようにする。
- ①知的好奇心:様々な問題に興味を持ち、答えを探そうとする
- ②客観性:何事かを決める時、感情や主観によらず、客観的に決めようとする
- ③開かれた心:様々な立場や考え方を考慮する
- ④柔軟性:自分のやり方、考え方を改められる
- ⑤知的懐疑心:十分な証拠が出るまで結論を待つ
- ⑥知的誠実さ:自分と違う意見でも、正しいものは正しいと認めることができる
- ⑦筋道立っていること:きちんとした論理を積み重ねて結論に達しようとする
- ⑧追求心:決着がつくまで考え抜き、議論する
- ⑨決断力:証拠に基づいてきちんと結論を下す
- ⑩他者の立場の尊重:他人の方が正しい場合は、それを認めることができる
「思考の原則」が正しい結論へと導く
クリティカルな思考を伸ばすための有効な手段は、「思考の原則」を知ることである。
例えば、我々の日々の思考の大部分を占めているのは、出来事の原因や人々の行動の理由を推測することである。これを専門用語で「原因帰属」という。「Aが生じた原因はBにある」というように、出来事の原因を特定することをいう。
クリティカル思考の基本として、まず原因帰属のあり方に関連する原則を知っておく必要がある。
例えば、我々は他人の行動の理由を考える時、その人を取り巻く周囲の状況からの影響を軽視し、その人が持つ性質の影響を重視しがちである。
ある人が階段を踏み外して怪我をすると、階段が滑りやすかったのだろうと考えるより先に、彼は何とドジなのかと考えがちだ。この種の思考の偏りを、心理学では「基本的帰属錯誤」と呼ぶ。人間関係の中で生じる誤解の多くはこれが原因だ。