2012年11月号掲載
ビジョナリー・カンパニー④ 自分の意志で偉大になる
Original Title :GREAT BY CHOICE
著者紹介
概要
「ビジョナリー・カンパニー」シリーズの第4弾である。今回、スポットを当てるのは、厳しい経営環境の中で、自ら何かを創造し、躍進する「10X(10倍)型企業」 ―― 所属業界の株価指数を10倍以上上回る株価パフォーマンスを上げている企業。徹底した分析により、同業他社にはない、10X型企業ならではのリーダーの特質、経営概念・手法を明らかにする。
要約
10X型企業のリーダーの特徴
我々は2002年以来、9年に及ぶ研究プロジェクトに取り組んできた。この時期、01年9月には世界同時多発テロが起こり、戦争が始まった。02年、株式市場では長期の強気相場が終焉した。
そんな中、世界中で技術革新とグローバル競争が進み、破壊的な影響をもたらしている。
にもかかわらず、躍進している企業がある。我々はこれを「10X(10倍)型企業」と命名した。
不確実な時代にあって、10X型企業は全て、所属業界の株価指数を10倍以上上回る株価パフォーマンス(株価上昇と配当金)を記録している。
この10X型企業を率いるリーダーは、「狂信的規律」「実証的創造力」「建設的パラノイア」という3つの資質を備えている。
狂信的規律
1990年代後半のこと。プログレッシブ保険の株価は乱高下した。その一因は「ウォール街を満足させるために収益予想ゲームに走るのは不誠実」という、同社CEOピーター・ルイスの信念だ。
収益予想ゲームとは、経営者がアナリストに対して収益見通しを示し、それを基にしてアナリストが収益を予想する「ゲーム」のことだ。
このゲームについてルイスは、「これでは深い分析と実地調査が不要になり、アナリストが手抜きで仕事をするようになる」と一蹴した。
「私が来期の収益について説明すれば、あなたは来期の収益を予想できます。だから、私もあなたもハッピー」というウォール街ゲームを拒絶したわけだ。
その結果、アナリストの予想が難しくなり、株価が乱高下したのだ。もし彼がウォール街ゲームを拒否し続ければ乱高下も続き、企業乗っ取り屋に狙われるかもしれない。だが、このゲームに屈服すれば、自らの信念を曲げることになる。
そこでルイスは、毎月決算を発表することにした。こうすれば、アナリストは実際の決算数字が毎月わかり、同社の四半期収益を比較的容易に予測できる。彼はこうして自らの信念を貫いたのだ。