2013年3月号掲載
クオリティ国家という戦略 これが日本の生きる道
著者紹介
概要
世界には、スイスやシンガポールなど小国でありながらも、世界中から優れた人材や企業を集め、高い国際競争力を誇る豊かな国々がある。著者の大前研一氏は、そのような国を「クオリティ国家」と命名、これこそが、日本が再び繁栄するための最強の国家モデルだという。本書では、クオリティ国家の実例を詳細に紹介し、日本が今後進むべき道を具体的に示す。
要約
世界で台頭する新たな国家モデル
2011年、日本の貿易収支が31年ぶりに赤字に転落し、その後もマイナス基調が続いている。今や日本は「貿易赤字国」になってしまった。
その直接の原因は、超円高や東日本大震災、エネルギー価格の上昇などだ。だが、本質的な原因は別にある。
21世紀に入って世界では、「国家のパラダイム」が大きく変わってきている。
しかし、日本は20世紀後半の工業国家モデルがあまりに成功したために、次のフェーズに行く準備をしておらず、政治家も役人も、そうした変化を読んで先手を打とうと考えてこなかった。
だから依然として、法律や制度が新しい産業を呼び込むネックになっている。世界の変化に対応する新しい国家モデルの確立が急務となっているが、その青写真はまだ全く示されていない。
今、繁栄している国には2つのタイプがある。
1つは「ボリューム国家」だ。
経済規模が巨大で、人口・労働力のボリュームと低コストの人件費を強みとして工業国家モデルで急成長している。その代表が、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)だ。
そして、もう1つが「クオリティ国家」と私が呼んでいる国々である。
経済規模は小さく、人口が300万~1000万人、1人当たりGDPが400万円以上で、世界の繁栄を取り込むのが非常にうまいという共通点がある。人件費は高いが、それをカバーする付加価値力と生産性の高い人材が揃っている。
規模の拡大を目指すボリューム国家に対して質の向上を目指す国家であり、スイス、シンガポール、フィンランド、スウェーデンがその典型だ。