2013年5月号掲載
パッシング・チャイナ 日本と南アジアが直接つながる時代
著者紹介
概要
日中関係の悪化が両国経済に及ぼす影響を、エコノミストが考察。データを基に、巷間いわれるほど日本経済への打撃は大きくないこと、中国もまた悪影響を被ることを示す。そして、基本的な価値観が違う中国は「日本のよきパートナーとはなり得ない」とし、日本企業は中国への依存度を下げ、親日的で、潜在的な成長力の大きい南アジアに積極的に進出せよと説く。
要約
南アジア「親日国」の実力
日本と中国の関係が急速に悪化している。
尖閣諸島を巡る問題をきっかけに、かつて経験したことがないレベルにまで悪化してしまった。
近年、日本の経営者は「中国詣で」を繰り返し、中国に収益拡大の活路を見いだそうとしてきた。だが今後は、中国の経済成長を絶対視することなく、中国を相対化する考え方が重要になるだろう。
13億人を超える膨大な人口を考えると、中国市場は魅力的だ。よって、日本企業が完全に撤退するという経営判断は難しいであろう。
その場合、日本企業がとり得る最善の選択は、「中国に経営リスクを過度に集中しないこと」だ。
従って、タイ、インド、インドネシア、ミャンマー、ベトナムを中心とする「南アジア」地域への進出を積極化し、経営リスクの分散を図ることこそが最も重要な経営課題となる ―― 。
「中国一極集中」を改める動き
近年、中国を巡る投資環境は大きく変化している。2008年には労働契約法が制定され、雇用者の保護が強化された。
また従来、中国では外資系企業への様々な優遇政策が採られてきたが、近年は国内企業と外資系企業の競争条件は同一になっている。
こうした状況下で、わが国の産業界では、「中国一極集中」を改める動きが着実に進行している。
その理由は、次の2つである。
第1に、日本の経営者の間で「チャイナ・リスク」に対する警戒感が急速に強まってきたことだ。