2013年6月号掲載

静かなるイノベーション 私が世界の社会起業家たちに学んだこと

Original Title :RIPPLING:How Social Entrepreneurs Spread Innovation Throughout the World

静かなるイノベーション 私が世界の社会起業家たちに学んだこと ネット書店で購入
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

近年、活躍が目立つ社会起業家。その世界的なネットワーク「アショカ」では、世界80カ国以上で選出された約2800人の社会起業家を「アショカ・フェロー」に認定し、活動を支援している。本書は、この中から18名のフェローの活動を紹介する。社会を良くしようと様々な分野で活動する彼らは、いずれも情熱、人々を動かす力に富み、そしてアイデアが斬新だ!

要約

時代遅れの考え方をつくりかえる

 近年、「社会起業」は一種のムーブメントだ。社会貢献を目指す変革者たちが、様々な分野で活躍している。

 そんな中、世界的な社会起業家ネットワーク「アショカ」が、世界をリードする社会起業家と認めた「アショカ・フェロー」は皆、周りの人や政府、企業の活動に影響を与えることで、自らのイノベーションを社会の隅々まで普及させている。

 社会システムを変える、そのアプローチのいくつかを紹介すると ――

普通の主婦

 ドイツにある人口2500人ほどの小さな町、シェーナウに住むウアズラ・スラーデクにとって、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故は人生を変える出来事となった。

 当時、彼女は普通の主婦だった。町がチェルノブイリとさほど離れていないこともあり、放射能漏れが起こった時、自分の子どもが外で遊ぶのを見ながら不安でしかたなかった。

 その時、思った。恐怖に脅えながら暮らすのはもうたくさんだ、予想だにしない大惨事を引き起こすようなエネルギーから脱却するのだ、と。

 そして、夫や町内の友人と一緒に「原子力のない未来をつくる親の会」を立ち上げた。それから13年間、彼女たちは住民や政治家に働きかけ、なぜ省エネや原子力撤廃が必要か、どうすれば実現できるのかを訴え続けた。エネルギーを節約することに加え、発電技術についても猛勉強した。

 そうした中で住民投票が行われ、シェーナウの町が国の送電網から独立し、再生可能エネルギーを独自につくりだす法案が成立したのだった。

 91年、彼女は地元の送電網の買い取りと、新たな電力会社の設立を目指し、運動を始めた。そして6年後、想像以上の速さでドイツ中から資金を集め、自分たちの送電網を手に入れたのだった。

 さらに、ブロック熱発電所の建設とソーラーパネルの設置を皮切りに、ウアズラが設立したシェーナウ電力会社(EWS)は、地元で消費する電力の一部を生産し始めた。100年にわたって続いた大手電力会社の独占は終わりを迎えたのだ。