2013年10月号掲載
孤立無業(SNEP)
著者紹介
概要
今、ニートに続く、新たなタイプの未婚無業者、「孤立無業者」(SNEP=スネップ)が急増している。ニートとの違いは、社会と接点がないこと。仕事をしないのに加え、常に1人か、家族だけと暮らす。その数、162万人(2011年)。01年からの10年間で約80万人増えた。将来的に生活保護等、社会的コストを増大させかねない彼らの実態について、本書はデータを基に詳しく説明する。
要約
孤立無業とは
私の専門は労働経済学で、これまで主に働く人にまつわる問題を考えてきた。
だが同時に、仕事をしていない人、いわゆる「無業者」のことも、ずっと気になっていた。
日本には、無業者が4828万人もいる。
ただ、一口に無業者といっても、学生・生徒、専業主婦、引退した高齢者など、いろいろな人たちが含まれている。そんな無業者の中で、私が研究してきたのは、次のような無業の人たちだった。
「20~59歳で未婚の人のうち、仕事をしていないだけでなく、普段ずっと1人でいるか、そうでなければ家族しか一緒にいる人がいない人たち」
そんな友だちや知り合いとの交流が全くない無業者のことを「孤立無業者」、英語では「SNEP(スネップ):Solitary No-Employed Persons」と呼んでいる。
孤立無業の定義
孤立無業の実態は、どのようなものか。
その実態を知るために、総務省統計局が実施している「社会生活基本調査」に注目した。
これは、国民がどんな生活をしていて、どんな時間の使い方をしているかを知るため、国が5年おきに行う調査だ。最新の調査は2011年に実施。全国の10歳以上の約20万人が無作為に選ばれ、回答が求められた。
この調査には「普段仕事をしていますか」という質問がある。そこで「仕事をしていない」を選択した人が、無業者である。
その中から学生、専業主婦、高齢者を除いた、20歳から59歳のいわゆる働き盛りの年齢層であるにもかかわらず、無業者となっている未婚の人を「60歳未満未婚無業者」と呼ぶことにする。