セブン＆アイHLDGS.　9兆円企業の秘密　世界最強オムニチャネルへの挑戦

オムニチャネル時代の到来

　売上高9兆円、合計114社で構成される巨大流通企業セブン＆アイ・ホールディングスは、世界的にも前例のないいくつかの新たな挑戦を始めた。

　その1つが、「オムニチャネル化」だ。

　オムニチャネルという言葉は、ネット先進国の米国ではすでに一般的な用語となっており、リアル店舗やスマホ、パソコン、テレビなどオムニ（全て）のチャネルを連携させてお客様にアプローチすることを意味する。

　このオムニチャネルの時代において、セブン＆アイ・ホールディングスは、オムニチャネルリテイラーとして世界最強になる潜在力を秘めている。

　そして、この挑戦の最終形では、日本の消費シェアを根こそぎ獲得している可能性がある。

オムニチャネルの時代はすぐそこまで来ている

　今は2015年9月。東京都内に住む「ちあき」は33歳独身、大手商社に勤める女性である。今週も残業が続き、土曜日の昼になって目が覚めた。

　起き上がってスマホを手に取り、無料でインストールした「セブンアプリ」を開き〈自分の冷蔵庫〉をクリックした。画面にはちあきの家の冷蔵庫に入っているものが一覧で出てきて、その材料で作れるメニューの提案も同時に出てくる。

　「今日はカレーが食べたい」と思い、〈カレーを作る〉をクリックした。すると〈忙しい？〉〈時間がある？〉と聞いてきた。

　そうだ、ちあきは前回カレーが食べたかった時、あまり時間がなく〈忙しい？〉をクリックしたら、2時間後に近所のセブン-イレブンから、セブンゴールドのカレーが届いたことを思い出した。

　「今日は自炊しよう」。ちあきは〈時間がある？〉をクリックした。すると、〈にんじん増量？〉と聞いてきた。ちあきはにんじん好きだが、にんじんが好きだなんて入力した覚えはない。

　「あっ、そうか、普段のネットスーパーでのお買い物だ、平均的な人の消費量と比較して私のにんじんの消費量が多いんだ」。ちあきは迷わず〈増量〉ではなく〈すごく増量〉をクリック。