2013年11月号掲載

稼ぐ力 「仕事がなくなる」時代の新しい働き方

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著者紹介

概要

今日、会社や産業が“突然死”するようになった。例えば、アップルのiPodの登場で、CDが産業ごと衰退した。いわば「仕事がなくなる時代」を迎えた今、ビジネスパーソンに必要な考え方、働き方とは? 世界的経営コンサルタントの大前研一氏が、これからは必須ともいえる「稼ぐ力」―― 会社にしがみつかず、自立して働く力をつけるためになすべきことを語る。

要約

日本企業は何に苦しんでいるのか

 今、サラリーマンの「仕事と給与」や「新しい働き方」を巡って様々な論議が沸き起こっている。「裁量労働制」「65歳定年制」「グローバル採用」「解雇ルールの緩和」…。

 こうした議論が活発になってきた背景にあるのは、事業のIT化やロボット化、あるいはグローバル化が進む中で、従来こなしていた仕事では十分な利益を上げられなくなっている現実だ。

 そのため、どれほど大きな組織であっても、社員1人1人の能力と成果、言い換えれば「稼ぐ力」が厳しく問われる時代になってきている。

 自立して稼げる、必要とされる人材となるためには何をすればいいのか。まず、日本企業が置かれている現状を見ると ――

「アベノミクスで賃上げ」政策への疑問

 安倍晋三政権は、日銀の異次元金融緩和策をカンフル剤にして株高・円安の流れを生み出した。さらに、デフレ脱却・経済再生策の1つとして、経済界に異例の「賃金引き上げ」を要請した。

 しかし、賃上げしたのはごく一部の企業であり、ベアではなく一時金での対応も多い。

 そもそも日本のサラリーマンの年収は、この20年間に全ての所得層で約100万円もダウンしている。その結果、人々の欲望が収縮し、モノが売れなくなってデフレが長期化したのである。

 ということは、デフレから脱却して経済を再生するためには月10万円近い賃上げが必要なわけで、月5000~1万円程度の賃上げではほとんど効果がない。このままでは、実需が拡大して実体経済が上向く可能性は極めて低い。

海外から投資を呼び込めない「異常」

 この20年間の日本の直接投資残高を見ると、対外投資(日本企業による海外への直接投資)は急増しているが、対内投資(海外企業による日本への直接投資)はほとんど増えず、2011年末時点で対外投資(約9650億ドル)が対内投資(約2260億ドル)の4.3倍に達している。

 つまり、海外からは全く投資を呼び込めていないのである。