2014年4月号掲載
最高の戦略教科書 孫子
著者紹介
概要
今から2500年ほど前に書かれたにもかかわらず、今なお大きな影響力を誇る兵法書『孫子』。マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ、あるいはW杯優勝ブラジル代表監督スコラーリなど、愛読する名経営者、勝負師は多い。本書では、卓越した戦略の数々を徹底解説。自分の知恵として吸収し、ビジネスや生き方に応用できるよう、例え話等を交え、わかりやすく説く。
要約
百戦百勝は善の善なる者にあらず
『孫子』は時代やジャンルを超えて、名勝負師や経営者の座右の書になり続けてきた古典である。
では、何ゆえに、不滅の名著となり得たのか。その謎を解くヒントが、『孫子』の著者といわれる孫武の置かれた時代状況に隠されている。
やり直しの利かない一発勝負
孫武の活躍した春秋時代末期は、戦乱状態にあった。次の戦国時代、戦乱はさらに加速。紀元前221年、秦の中国統一まで戦乱は約550年続く。
こうした時代状況から浮かび上がる孫武の戦争認識は、まずこうだ。
「孫子曰く、兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。察せざるべからず」
―― 戦争は国家の重大事であって、国民の生死、国家の存亡がかかっている。それゆえ、細心な検討を加えなければならない。
『孫子』全篇が、この一節をもって始まる。
確かに戦争で人は死んでいくし、国も存亡の淵に立たされる。まさしく重大事だ。しかしそれだけではない。もう一歩深い意味がここにはある。
「亡国は以ってまた存すべからず、死者は以ってまた生くべからず」
―― 国は亡んでしまえばそれでお終いであり、人は死んでしまえば二度と生きかえらないのだ。
これは『孫子』全篇の結論部分に置かれている言葉であり、この2つが冒頭と結論で呼応し合って、全篇を貫く構図になっている。つまり、「やり直しの利かない一発勝負になりかねないのが戦争。だからこそ重大事」というのが孫武の認識だ。