2014年8月号掲載
レゴはなぜ世界で愛され続けているのか 最高のブランドを支えるイノベーション7つの真理
Original Title :BRICK by BRICK:How LEGO Rewrote the Rules of Innovation and Conquered the Global Toy Industry
著者紹介
概要
知育玩具の「レゴブロック」を柱に、世界的な大企業となったレゴ。同社は2000年頃、倒産の危機に瀕するが、見事V字回復を果たす。いかにして危機を脱したのか? 経営幹部など多くの関係者への取材を基に、再建のカギといえる、レゴの「イノベーション」のあり方を紹介。それは、企業がイノベーションを行う時、何をし、何をすべきでないかの教訓でもある。
要約
レゴらしさを取り戻せ
角張った形の、カラフルなプラスチックの直方体、「レゴブロック」。その1個1個は規格化されたプラスチック製品だが、いくつか手に取り、はめ合わせると、たちまち無限の可能性が広がる。
創業から80年。レゴはその独創性によって、玩具業界で比類なき地位を築き上げた。
しかし20世紀末、子どもたちはテレビゲームなどに夢中になる。アナログのおもちゃを主力商品にしていたレゴが気づいた時には、競争の熾烈なデジタルの世界で、遅れを取っていた。そして2003年、レゴは創業以来最大の損失を計上した。
だが、苦労しつつも、新経営陣のもとで、見事再建。その復活の物語をみると ――
統制と集中が必要
レゴを成長軌道に戻すには、まず、不振に陥った、その根本的な原因を探る必要があると、新CEOヨアン・ヴィー・クヌッドストープは考えた。
そして、過去10年間の新事業を思い浮かべた。コンピュータゲーム、子供服、書籍・雑誌、テーマパーク…。新事業はことごとく赤字だった。
様々な新事業を思い返すと、問題の本質がどこにあるのかがわかった。「急ぎすぎ」だったのだ。魅力的な製品やサービスを生み出そうとして、あまりに前のめりになっていた。彼は言う。
「実験や多角化は間違いではありません。ですが、その土台には、それらを1つにまとめるマネジメントシステムが必要です。レゴには、イノベーションの指針がありませんでした」
レゴがどん底から脱するためには、職場の文化 ―― 目標、信念、習慣、働き方 ―― において創造性だけでなく、統制と集中もおろそかにしてはならない。統制と集中があって初めて、新しいものを生み出しながら、かつレゴらしさを保てる。
クヌッドストープが目指したのは、各自の判断でレゴの新しい可能性を追求させると同時に、結果にも責任を持たせる文化を築くことだった。
企業文化を築き直す
レゴの文化を築き直す作業は、創業以来レゴを支えてきた根本的な価値観に、いかに立ち返るかという試みだった。