2015年2月号掲載
問いかける技術 確かな人間関係と優れた組織をつくる
Original Title :Humble Inquiry:The Gentle Art of Asking Instead of Telling
著者紹介
概要
人と話す時、とかく私たちは、相手に「尋ねる」より、自分が「話す」方に力を入れがち。しかし、組織心理学の第一人者である著者によれば、良好な人間関係の構築に役立つのは「謙虚に問いかける」こと。100の言葉よりも、1つの問いかけが人を動かす。仕事をうまく進め、優れた組織を築く上で有用な、この「問いかけ」の技法を、豊富な実例を交え解説する。
要約
謙虚に問いかける
話し合いが、良からぬ方向へ逸れてしまった。人から忠告されて不愉快になった。議論が泥沼化して、歩み寄れなくなってしまった…。
こんな事態を招かないためには、どうすればよかったのか。どこで何をどう間違えたのか。
この顕著な例として、私の教え子の体験談を紹介しよう。
彼はマサチューセッツ工科大学のビジネススクールで学んでいた。ある日、大事な試験を控えていた彼は、6歳の娘に邪魔をしないようにと言い、書斎に籠った。だが勉強していると、娘がドアをノックする音が聞こえたので、つい頭ごなしに叱ってしまった。「お父さんの邪魔をするなって言っただろう」。娘は泣き出し、走り去った。
翌朝、娘を傷つけたと妻になじられた。
「寝る前にお父さんのところへ行って『おやすみなさい』って声をかけて、それからコーヒーでも飲みたいかどうか聞いてくるように、私が頼んだの。試験勉強が大変そうだから。どうしてあなたは理由も聞かずに、いきなりあの子を叱ったりしたの?」
人間関係を築く3つのポイント
このような状況に直面したら、私たちはどのように行動すべきなのか。やるべきことは、極めてシンプルだ。ところが、実行するのは難しい。
まず、私たちは3つのことを自分に言い聞かせなければならない。
- ①自分から一方的に話すのを控える
- ②「謙虚に問いかける」という姿勢を学び、相手にもっと質問するように心がける
- ③傾聴し、相手を認める努力をする
相手に何を尋ねるかということと、それをある特定の流儀 ―― 私はこれを「謙虚に問いかける」と表現している ―― で行うことは、人と人が信頼関係を築く上で、その土台となる。
質問することで、どのように人間関係が築かれるのか
私たちは、自分がしゃべることに一生懸命になる「自分が話す文化」の中にいるので、相手に質問するのが上手ではない。ましてや謙虚な姿勢で聞くとなると、特に難しい。
そもそも、自分が話すことの、いったいどこがそんなに悪いというのか。