2015年3月号掲載
チャイナハラスメント 中国にむしられる日本企業
著者紹介
概要
著者の松原邦久氏は、中国ビジネスの経験が豊富な、自動車メーカー・スズキの元中国代表。冒頭、氏は言う。「日本人と中国人は、あまりにも違った人たちであり、もし関わろうとするのならば相当な覚悟を持って臨むべき」。知的財産権が保護されない、賄賂の横行、撤退が困難…。本書では、かつて経験した様々な問題を挙げ、その背景にあるものを解説する。
要約
中国ビジネスに潜むリスク
私が最初に中国を訪ねたのは、中国が改革開放政策をスタートさせた3年後の1981年である。その後、ずっと自動車メーカーの中国担当として中国ビジネスに携わってきたが、ふと振り返ってみると、奇妙な事実に気づいた。日本企業の中国ビジネスは儲かっていない、という事実である。
加えて、反日運動だ。事あるごとに難癖をつけられ、日本製品不買運動にまで発展している。
日本企業への「チャイナハラスメント」とでもいうべき嫌がらせが今後も続くなら、中国ビジネスの将来は明るいとはいえない。
原点に戻って、中国ビジネスに何を期待しているのかを考え直し、縮小や撤退を含めた根本的な見直しをする時期に差し掛かっていると思う。
カントリーリスクの高い国
海外で事業を展開する時は、カントリーリスクがある。これは、その国の政権の不安定さなどの政治のリスク、為替のリスク、法律の変更によるビジネス環境変化のリスクなどで、一企業の力量で解決できるような問題ではない。
中国の経済は政治と一体で動いているので、政治の意向で如何様にも変わるし、政治が経済に口出しするのは日常的だ。政経不分離だから、カントリーリスクはてんこ盛り状態である。
「反日政策」という中国独特のリスク
政治は国内の問題から人民の目をそらせるために、あるいは政治の目的を達成するために、しばしば外に敵を求める。中国の場合、その敵を日本にすれば、反日教育を受けた人民の支持も得られ、国内が簡単に一致団結できる。
共産党は、日本と中国の利害関係が一致しない時、反日デモを行ったり、日系企業に押しかけて操業を妨害したりして嫌がらせを行う。
共産党は時に、政治的な目的を達成する手段としても経済を利用する。日本に対してレアアースの輸出量を制限したり、価格を吊りあげたりしているのはご承知の通りである。
ちなみに中国では、市民が自分たちの要求を実現するためにデモを行うことはできない。そのデモが堂々と行われるのだから、これは関係当局のお墨付きを得た「政治行動」と考えるべきだろう。
なぜ日本を集中的に攻撃するのか
では、なぜ中国は日本ばかりを標的にして、国際社会の常識では考えにくい行動をとるのか。