2017年3月号掲載

意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策

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著者紹介

概要

本を読むか、読まないか。何をもって善とし、悪とするか ―― 。生きるということは、意思決定の連続だ。ある時はうまく決められ、ある時は失敗する。なぜか?本書は、情動と理性という2つの「こころの働き」に着目。これを軸に、心理学と脳科学の最新の研究成果を紹介しながら、意思決定のメカニズムを探っていく。

要約

二重過程理論

 私たちの様々なこころの働きは、多様な機能を持つ脳の働きによって実現されている。

 例えば街を歩いていて、菓子屋のショーケースに美味しそうなケーキがあるのを見つけたとする。甘いものが好きな人なら、食べたいと思うだろう。

 しかし、ダイエットをしている人にとっては、カロリーオーバーになることが気になる。ケーキは食べたいけど我慢しないといけない、と自制心を働かせてその行動を制御しようとする。

 このように、意思決定の多くの場面では、素早く湧きあがる情動や欲求と、時間をかけた思考に基づく理性や自制心が、意思決定に作用する別々のシステムとして機能しているのである。

 意思決定において、こうした2種類のこころの働きを想定する理論を「二重過程理論」と呼ぶ。

二重過程理論と2つの「こころ」の呼称

 2つのこころの働きについて、学術的によく使われる表現の1つが「システム1」「システム2」という分類の仕方である。

・情動的・直感的な「システム1」

 システム1は、直感的な反応や情動的な反応、本能的な欲求の発現を支えるシステムだ。自動的に働き、努力を必要とせず、論理性よりも直感に依存する。知能や処理能力とは、あまり関係がないとされる。本書では「速いこころ」と呼ぶ。

 ケーキを見てすぐに「食べてみたい!」という欲求が芽生えるのは、システム1の働きによる。

・理性的・統制的な「システム2」

 システム2を働かせるには努力が必要で、時間もかかる。学習によって獲得された論理性や特定のルールに基づいて思考が展開されるのも、知能や処理能力と関係しているのも、システム2の大きな特徴である。システム1の速いこころと対をなすものとして、本書では「遅いこころ」と呼ぶ。

 先のケーキの例でいえば、「ダイエット中だから食べるわけにはいかない」と判断する際には、システム2がフル稼働している。もちろん、うまく制御できる場合もあれば、できない場合もある。

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