2017年9月号掲載

あなたが望む以上の成果が得られる! スタンフォード&ノースウエスタン大学教授の交渉戦略教室

Original Title :Getting (More of) What You Want:How the Secrets of Economics and Psychology Can Help You Negotiate Anything, in Business and in Life

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著者紹介

概要

「あなたが望む以上の成果を実現する交渉戦略」の立て方を示す。世に交渉術の本は多いが、本書が説くのは経済学と心理学、両方の視点から交渉する方法。経済学の視点で交渉の成果を測り、心理学の視点で交渉の際の人の反応を理解する。これをベースに交渉すれば、希望がはっきり伝わり、相手が気持ち良く承諾してくれる!

要約

交渉の新たな戦略

 長い間、交渉術の定番といえば、『ハーバード流交渉術』(フィッシャー&ユーリー著)だった。この本が提示するのは、両者にプラスとなる価値の創造を目指す問題解決のアプローチだ。

 交渉といえば勝ち負けと認識されていた当時、「双方の視点を考慮すべき」というメッセージは斬新だった。価値が拡大できれば互いの取り分を増やせるという、ハーバード流のアプローチはとてもわかりやすいものだった。

 だが、そのテクニックは交渉の成功を約束しない。「交渉で拡大した価値の分配方法」という重要なポイントを見落としていたのだ。皮肉にも、価値の拡大を重視して交渉すると、それを分配する段階になって自分に不利になりかねないのだ。

 交渉で最も重要なのは、拡大した価値の大きさではなく、「自分が得られる価値」である。

経済学と心理学の統合的視点が成果をもたらす

 交渉の時に何をどう言えばいいかわからない。そんな人も多いと思う。だが、経済学と心理学の統合的視点を学べば、希望をはっきり言えるようになり、相手に対して影響力を発揮できる。

 中古車の売却を例に考えてみよう。

 車を売りたいと思ったあなたは、売却希望価格を相手に伝えた。その時、相手が言い値で即決したら、あなたはどんな気持ちになるだろうか?

 経済学の理論では、喜ぶべきだと考える。なぜなら車のスペックを把握しているのは売主で、価値を最大に評価した上で売却価格を設定したと考えるからだ。でも、実際はどうか? 「もっと高い金額をつければよかった!」。相手にすんなりOKされると、こう思ってしまいがちだ。

 低い金額を嬉しく思うなど、経済学的には考えられない。でも、心理学的に考えれば想定内。「中古車の売買では値切られる」というのが社会通念に合致した行動だからである。相手が言い値で即決したなら、その金額は相手にとって高い金額ではなかったということ。それを感じたあなたは、「もっと高い金額をつければよかった…」と後悔するわけだ。

 人間の心理作用がわかれば、最適な反応方法が見えてくる。あなたが買主の時は最初のオファーで即決せず、少しでも相手と交渉する。それが売主と買主にとって、より満足度の高い交渉になる。

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