2018年5月号掲載
シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感
- 著者
- 出版社
- 発行日2018年1月20日
- 定価836円
- ページ数171ページ
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著者紹介
概要
「シャーデンフロイデ」とは、誰かが失敗した時に思わず湧き起こる喜びの感情のこと。最近であれば、成功者のささいな過失をネット上で叩き、ほくそ笑んだりする。実は、こうした心の動きは誰にもある。人はなぜ、他者を妬み、その不幸を喜ぶのか。現代社会が抱える病理の象徴ともいうべき、この感情の正体を解き明かす。
要約
シャーデンフロイデとは何か
「シャーデンフロイデ」 ―― 。
これは、誰かが失敗した時に、思わず湧き起こってしまう喜びの感情のことである。
こうした心の動きは、誰もが持っている。しかし、自分がそんな気持ちを持っていることを、他人に知られたくはない。自分にそんな感情があるなど、ちょっと受け入れがたい。そんな抵抗感が生じてもおかしくはない。
なぜならこれは、“恥ずかしい”感情だからだ。
“幸せホルモン”オキシトシン
シャーデンフロイデという単語はドイツ語で、Schadenfreudeと綴る。Freudeは喜び、Schadenは損害、毒、という意味である。
実はこの感情は、「オキシトシン」という物質と深い関わりがある。オキシトシンは、1906年にヘンリー・デールが発見した。脳下垂体をすりつぶした汁が陣痛を引き起こすことを発見したデールは、この汁の中に出産を速める物質が含まれていると考え、それをオキシトシン(「迅速な出産」という意味のギリシア語)と名付けた。
オキシトシンは、ホルモンとして身体に働きかけて様々な機能に影響を及ぼす他、神経伝達物質として、脳内で重要な役割を果たしてもいる。例えば、温かい風呂に入る時、私たちはリラックスして、穏やかな幸せな気持ちにひたる。こうした刺激は、脳にオキシトシンの分泌を促す。
そしてオキシトシンは、セロトニン、ドーパミンなどの神経伝達物質に影響を与える。その効果としては、血圧を下げる、心拍が遅くなる、コルチゾール(ストレスホルモン)濃度を下げる、といったことが挙げられる。
オキシトシンの働き:「愛と絆」
オキシトシンの基本的な働きは、「愛と絆のホルモン」という言葉で表現することができる。
例えば、オキシトシンをラットに注射すると、他のラットを攻撃する頻度が下がり、友好的な行動が増え、群れを作ろうとする傾向が高くなる。
加えて興味深いのは、「ソーシャル・メモリー」(他者との関わりの記憶)を増強する働きだ。