2018年7月号掲載
限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭
Original Title :THE ZERO MARGINAL COST SOCIETY:THE INTERNET OF THINGS AND THE RISE OF THE SHARING ECONOMY
- 著者
- 出版社
- 発行日2015年10月30日
- 定価2,640円
- ページ数531ページ
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著者紹介
概要
「限界費用」とは、モノ・サービスを1つ増やした時にかかる費用のこと。今後、IoT(モノのインターネット)によって効率性・生産性が高まると、限界費用はゼロに近づき、モノやサービスはほぼ無料に。今の資本主義から「共有型経済」へ移行するという。この経済パラダイムの大転換を事例を挙げて説いた、世界的ベストセラー。
要約
市場資本主義から共有型経済へ
資本主義は今、跡継ぎを生み出しつつある。それは、「共有型経済(シェアリングエコノミー)」だ。共有型経済は19世紀初期に資本主義と社会主義が出現して以来、初めてこの世に登場する新しい経済体制である。
実際、私たちはすでに、一部が資本主義市場、一部が共有型経済という、ハイブリッド経済の出現を目の当たりにしている。
今、その初期の段階にあって、次第に明らかになってきていることがある。それは、資本主義体制が徐々に衰退し始めているという事実だ。
資本主義の稼働ロジック
資本主義の稼働ロジックは、成功することによって失敗するようにできている。
それがどういうことか説明しよう。
近代資本主義の父アダム・スミスによれば、市場では需要と供給とが均衡を保つ。財やサービスに対する消費者の需要が高まれば、売り手は価格を上げる。もし価格が高くなり過ぎれば、需要が落ち込み、売り手は値下げせざるを得なくなる。
売り手が市場を独占あるいは寡占できれば、買い手にはほとんど他に選択肢がないので、価格を高く保つことができる。だが長期的には、新たな競争者が登場し、テクノロジーを発展させ、代替の財やサービスの生産性を上げ、価格を下げ、市場の独占体制は崩される。
「限界費用(マージナルコスト)」が急落し、利益が枯渇
この資本主義体制の稼働ロジックが大成功を収め、結果として生産性が極限まで高まったとする。
それは、熾烈な競争によって無駄を極限まで削ぎ落とすテクノロジーが登場し、生産性を最適状態まで押し上げ、「限界費用」、すなわち、財を1単位(ユニット)追加で生産したりサービスを1ユニット増やしたりするのにかかる費用がほぼゼロに近づくことを意味する。
言い換えれば、財やサービスの生産量を1ユニット増加させるコストが(固定費を別にすれば)実質的にゼロになり、その製品やサービスがほぼ無料になるということだ。仮にそんな事態に至れば、資本主義の命脈ともいえる利益が枯渇する。
市場交換経済では、利益は利鞘の形で得られる。例えば、私の原稿が本となって買い手に届くまでには、編集者や印刷業者、運送・倉庫業者、小売業者などの手を経る。この過程に携わる者がそれぞれ、利幅をコストに上乗せする。