2018年7月号掲載

限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭

Original Title :THE ZERO MARGINAL COST SOCIETY:THE INTERNET OF THINGS AND THE RISE OF THE SHARING ECONOMY

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著者紹介

概要

「限界費用」とは、モノ・サービスを1つ増やした時にかかる費用のこと。今後、IoT(モノのインターネット)によって効率性・生産性が高まると、限界費用はゼロに近づき、モノやサービスはほぼ無料に。今の資本主義から「共有型経済」へ移行するという。この経済パラダイムの大転換を事例を挙げて説いた、世界的ベストセラー。

要約

市場資本主義から共有型経済へ

 資本主義は今、跡継ぎを生み出しつつある。それは、「共有型経済(シェアリングエコノミー)」だ。共有型経済は19世紀初期に資本主義と社会主義が出現して以来、初めてこの世に登場する新しい経済体制である。

 実際、私たちはすでに、一部が資本主義市場、一部が共有型経済という、ハイブリッド経済の出現を目の当たりにしている。

 今、その初期の段階にあって、次第に明らかになってきていることがある。それは、資本主義体制が徐々に衰退し始めているという事実だ。

資本主義の稼働ロジック

 資本主義の稼働ロジックは、成功することによって失敗するようにできている。

 それがどういうことか説明しよう。

 近代資本主義の父アダム・スミスによれば、市場では需要と供給とが均衡を保つ。財やサービスに対する消費者の需要が高まれば、売り手は価格を上げる。もし価格が高くなり過ぎれば、需要が落ち込み、売り手は値下げせざるを得なくなる。

 売り手が市場を独占あるいは寡占できれば、買い手にはほとんど他に選択肢がないので、価格を高く保つことができる。だが長期的には、新たな競争者が登場し、テクノロジーを発展させ、代替の財やサービスの生産性を上げ、価格を下げ、市場の独占体制は崩される。

「限界費用(マージナルコスト)」が急落し、利益が枯渇

 この資本主義体制の稼働ロジックが大成功を収め、結果として生産性が極限まで高まったとする。

 言い換えれば、財やサービスの生産量を1ユニット増加させるコストが(固定費を別にすれば)実質的にゼロになり、その製品やサービスがほぼ無料になるということだ。仮にそんな事態に至れば、資本主義の命脈ともいえる利益が枯渇する。

 市場交換経済では、利益は利鞘の形で得られる。例えば、私の原稿が本となって買い手に届くまでには、編集者や印刷業者、運送・倉庫業者、小売業者などの手を経る。この過程に携わる者がそれぞれ、利幅をコストに上乗せする。

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