2019年3月号掲載
ハーバード・ビジネス・レビュー コミュニケーション論文ベスト10 コミュニケーションの教科書
Original Title :HBR's 10 MUST READS ON COMMUNICATION
- 著者
- 出版社
- 発行日2018年12月12日
- 定価1,980円
- ページ数253ページ
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概要
『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に掲載された論文の中から、同誌編集部が「コミュニケーションについて知っておくべき最低限のこと」として10本を厳選。良好な対人関係を結ぶには、どうすればいいのか。話し方や説得術、スピーチの秘訣等々、効果的に意思を相手に伝えるためのヒントにあふれた、実践的な1冊だ。
要約
嘘偽りのないスピーチの秘訣
ニック・モーガン(パブリック・ワーズ設立者)
営業担当副社長のキャロルは、新年度のスタートを切るに当たり、営業会議でスピーチを行った。スライドを見せ、期待の新製品について身振り手振りを交えつつ説明した。そして最後に、全体を見渡し、売上のストレッチゴールを達成すれば、年間優秀者として表彰されると発破をかけた。
ところがこの瞬間、何かしっくりこないものを感じた。社員らはやる気に満ちあふれている、といった様子ではない。彼女は当惑した ―― 。
あなたは彼女に似た経験をしたこと、またはこうしたスピーチを聞いたことはないだろうか。そう、話し手に問題はないが、何か違和感があるプレゼンテーションだ。違和感の理由はわからないが、とにかく嘘偽りのない話し手に思えないのだ。
今日では、経営者による数々の不祥事の影響もあって、社員も株主もこれまで以上に懐疑的になっている。このため、「嘘偽りのない(オーセンティック)」ことは、リーダーシップにおける重要な資質になっている。
「非言語コミュニケーション」は言葉より雄弁
マネジャーが公の場でメッセージを伝える場合、いかに信念を持って話しても、信頼できる話し手として受け入れられることは難しい。なぜか。
その答えは、人間の脳がコミュニケーションを知覚・処理する仕組みにある。
非言語コミュニケーションの力については、すでによく知られている。筆者はこれを「第2の会話」と呼んでいる。言葉によるメッセージとボディランゲージが一致しない時、聞き手は例外なく、非言語メッセージに反応する。つまり、言葉よりも、体の動きの方が雄弁なのだ。
だからといって、事前に入念なリハーサルをしたところで、たいていうまくいかない。なぜなら、そのようなリハーサルでは、「聴衆と目を合わせる」「両腕を広げる」などの非言語要素について細かく確認するが、実はそのような動きこそ、わざとらしさを与えてしまうからだ。
では、計算されたボディランゲージが嘘っぽく見えてしまうのはなぜか。
実は、最近の脳の研究で、非言語コミュニケーション、すなわち第2の会話は、言葉に先行することがわかり始めている。何がしかの感情が脳の奥底で起こると、言葉が出てくる前に、まず第2の会話のスイッチが入るのだ。