2019年3月号掲載

ハーバード・ビジネス・レビュー コミュニケーション論文ベスト10 コミュニケーションの教科書

Original Title :HBR's 10 MUST READS ON COMMUNICATION

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概要

『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に掲載された論文の中から、同誌編集部が「コミュニケーションについて知っておくべき最低限のこと」として10本を厳選。良好な対人関係を結ぶには、どうすればいいのか。話し方や説得術、スピーチの秘訣等々、効果的に意思を相手に伝えるためのヒントにあふれた、実践的な1冊だ。

要約

嘘偽りのないスピーチの秘訣

ニック・モーガン(パブリック・ワーズ設立者)

 営業担当副社長のキャロルは、新年度のスタートを切るに当たり、営業会議でスピーチを行った。スライドを見せ、期待の新製品について身振り手振りを交えつつ説明した。そして最後に、全体を見渡し、売上のストレッチゴールを達成すれば、年間優秀者として表彰されると発破をかけた。

 ところがこの瞬間、何かしっくりこないものを感じた。社員らはやる気に満ちあふれている、といった様子ではない。彼女は当惑した ―― 。

 あなたは彼女に似た経験をしたこと、またはこうしたスピーチを聞いたことはないだろうか。そう、話し手に問題はないが、何か違和感があるプレゼンテーションだ。違和感の理由はわからないが、とにかく嘘偽りのない話し手に思えないのだ。

 今日では、経営者による数々の不祥事の影響もあって、社員も株主もこれまで以上に懐疑的になっている。このため、「嘘偽りのない(オーセンティック)」ことは、リーダーシップにおける重要な資質になっている。

「非言語コミュニケーション」は言葉より雄弁

 マネジャーが公の場でメッセージを伝える場合、いかに信念を持って話しても、信頼できる話し手として受け入れられることは難しい。なぜか。

 その答えは、人間の脳がコミュニケーションを知覚・処理する仕組みにある。

 非言語コミュニケーションの力については、すでによく知られている。筆者はこれを「第2の会話」と呼んでいる。言葉によるメッセージとボディランゲージが一致しない時、聞き手は例外なく、非言語メッセージに反応する。つまり、言葉よりも、体の動きの方が雄弁なのだ。

 では、計算されたボディランゲージが嘘っぽく見えてしまうのはなぜか。

 実は、最近の脳の研究で、非言語コミュニケーション、すなわち第2の会話は、言葉に先行することがわかり始めている。何がしかの感情が脳の奥底で起こると、言葉が出てくる前に、まず第2の会話のスイッチが入るのだ。

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