2019年3月号掲載
ハーバードが総力を挙げて徹底分析 キッシンジャー超交渉術
Original Title :Kissinger the Negotiator:Lessons from Dealmaking at the Highest Level
- 著者
- 出版社
- 発行日2019年1月15日
- 定価2,420円
- ページ数404ページ
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著者紹介
概要
ヘンリー・キッシンジャー。米国務長官としてニクソン、フォード両政権を支え、ソ連、中国などとの重大な交渉において、卓越した手腕を発揮したことで知られる。そんな偉大な交渉者の事例を分析し、最高の結果を得るための教訓を引き出した。論理的・合理的な現実思考に基づくその交渉術は、ビジネスにも応用できる。
要約
最高の交渉者、キッシンジャー
世界で最も優れた交渉者は誰か?
こう尋ねられると、私たちは必ず、かつてアメリカの国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャーの名前を挙げる。
1974年に行われた世論調査によれば、アメリカ人の88%が彼を「非常に優れた交渉者」だと考えていた。また、40年後の2014年、国際関係学を教えている1375大学の1615人の学者にアンケートを行ったところ、大半がキッシンジャーを過去50年間で最も有能な国務長官と見なしていることがわかった。
キッシンジャーとは何者か?
キッシンジャーは1923年に、ユダヤ系ドイツ人の家庭で生まれた。1938年、一家はナチスによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の始まりを察して、アメリカに移住。彼は1943年、アメリカに帰化した。ハーバード大学と大学院を修了した後、同大学の教授に任命され、ついには終身教授の地位を得た。
そして1969年、ニクソン大統領により国家安全保障問題担当大統領補佐官に任命された。1973年には国務長官に就任、次いでフォード大統領の下でも国務長官を務めた。
公職を辞した後も、アメリカ大統領の誰もが彼に助言を求めた。90歳代になっても評論家として活躍し、オバマからトランプまで、また、プーチンからメルケルや習近平まで、多岐にわたる世界の指導者から意見を求められている。
米ソ・米中間の関係を改善
公職にあった時、キッシンジャーは数々の重大な交渉に関わった。
例えば、彼が国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任した頃、米ソが繰り広げる冷戦は危機のピークを迎えていた。3万7000超の核兵器が互いに照準を定め、いつでも発射できる状態にあった。この状況下で、彼は「緊張緩和(デタント)」政策に基づく交渉を重ね、ソ連との関係を改善した。超大国間で初の戦略兵器制限条約の締結を導いたのだ。
また、1949年に中華人民共和国が建国されて以来、20年にわたり、アメリカは中国を認めず、接触もしてこなかった。キッシンジャーは、1971年に密かに中国の指導者、毛沢東、周恩来との交渉を始めた。このプロセスを土台として、1972年、アメリカは中国との関係正常化の第一歩を踏み出し、それが関わりを深める道へとつながった。
キッシンジャー交渉術の核心
キッシンジャーの交渉事例からは、数々の教訓が引き出せる。それは、例えば次のようなものだ。