2019年5月号掲載
イースタニゼーション 台頭するアジア、衰退するアメリカ
Original Title :EASTERNIZATION
- 著者
- 出版社
- 発行日2019年2月25日
- 定価3,080円
- ページ数337ページ
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著者紹介
概要
世界の経済や政治は、これまで欧米を中心に形作られてきた。だが今や、中国やインドの台頭などにより、世界の重心はアジアへ移りつつある。この「イースタニゼーション」(東洋化)の動きを、フィナンシャル・タイムズ紙の外交関係論評責任者が解説。取材力を駆使し、軋みを見せる世界、アジアの動きを浮き彫りにする。
要約
西洋から東洋へ
私たちが生きている時代の意味。それを理解するには、歴史を500年以上さかのぼる必要がある。
世界のパワーバランスの変遷
1400年代初め、中国もイスラム世界も、ヨーロッパと肩を並べる経済・政治大国だった。だが世界のパワーバランスは、1490年代のヨーロッパの大航海時代の幕開けとともに変わり始めた。
1492年、スペイン王室に雇われた探検家クリストファー・コロンブスが大西洋を横断。98年には、ポルトガルの探検家バスコ・ダ・ガマがインドに到達した。こうして、ヨーロッパとそれ以外の世界との関係は変容し始めたのである。
その後、数世紀にわたり、ポルトガルとスペイン以外のヨーロッパ諸国も、軍事や産業技術の力で、世界を股にかけた帝国を築くことができた。
しかし、20世紀後半に入ると、2度の世界大戦と脱植民地化の波が、ヨーロッパの帝国主義を崩壊に導いた。インドはイギリスから独立を勝ちとり、フランスはインドシナから追い出され、オランダはインドネシアから撤退する。それでも、第2次世界大戦後にアメリカが超大国として頭角を現したことで、西側の覇権はその後も続いた。
こうして数世紀に及んだ欧米諸国による支配は、経済力が基盤だった。
アジアへのパワーシフト
ところが過去50年の間に、西側によるグローバル経済の支配は衰え、アジア各国が台頭した。
アジアの経済発展はまず1960年代に日本で始まり、70年代に韓国、台湾、東南アジア諸国の一部に波及する。80年以降は中国経済が2桁成長を始め、インドも90年代以降、成長を遂げた。
そして2014年に象徴的な瞬間が訪れる。購買力で測った場合、中国が世界最大の経済国になったと国際通貨基金(IMF)が発表したのだ。IMFによれば、今日の世界4大経済国のうち3カ国がアジアの国だという。1位が中国、2位がアメリカ、3位がインド、4位が日本である。
アジアへのパワーシフトの理由は単純だ。人口の多さである。2025年には、世界人口の約3分の2がアジアに暮らしているだろう。対照的に、アメリカは約5%、EUは約7%を占める程度だ。
数世紀にわたって西洋と東洋の間には富と技術に関して大きな差があったため、西側諸国が国際情勢とビジネスを支配できた。人口の差は問題にならなかった。しかし、過去数十年にわたるアジアの急激な経済発展は、数で勝るアジアに世界のパワーバランスが傾くほどに、富の格差を縮めた。